本年度は、スピンと軌道の結合したBEC中の量子渦の研究を中心的に行った。対称性による量子渦の分類理論は、超流動ヘリウム3の研究においてSalomaaとVolovikによって初めて導入された。彼らの議論では固定された境界条件の下での渦芯構造を扱っていたが、我々は任意の境界条件を持つ場合に分類理論を拡張した。拡張された分類理論を用いて、Rashba型スピン・軌道相互作用のあるBECにおいて、ゲージ、スピン、空間回転の結合した対称性が自発的に破れることで現れる量子渦を解析した。また、我々が考えているスピン軌道相互作用を持つスピノルBECは、スピンと空間の回転角が同じであることが要請される。従って、自発的対称性の下で自発的に量子渦や渦格子が形成される。このような系においては対称性の破れにより自動的に基底状態の量子渦が決定されるため、対称性を用いた分類が非常に有用である。我々は数値計算を併用することにより、この系において先行研究では取り扱えなかった非自明な境界条件を持つ量子渦が現れること、我々の分類理論によってこの系の量子渦の完全な分類ができることを示した。スピン軌道相互作用を持つスピノルBECの基底状態に出現する量子渦が対称性による分類に従っていることを確認した。さらには、数値計算により導かれる基底状態の中には先行研究では取り扱えない非自明な境界条件を持つ量子渦も出現しており、これらは我々のスキームによって完全に分類されることも示した。また、これら新奇な量子渦は、境界において複雑なスピンのテクスチャーを形成しており、境界において非自明な量子数を持っていることも明らかにした。これら新奇な量子渦の境界においては、非自明な量子数で特徴づけられる複雑なスピン・テクチャーが形成されていることも明らかにした。また、2成分BEC系を高速回転した場合に現れる量子ホール状態の研究も行った。
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