研究概要 |
新たに開発したボアホールアンテナを南アフリカの地下1000mの金鉱山に設置して微小地震に伴う電位変動の観測を開始した.National Instruments PXIシステムにより,10kHzサンプリングでの連続測定,およびAE信号をトリガーにしたプレトリガー方式での高速サンプリングでの測定を行った.観測域の大部分が珪岩である.我々は室内実験において,水に飽和した花崗岩でAEが発生する時に石英の圧電効果などにより電位変化が測定されることを示してきたが、石英の結晶軸の向きがランダムな場合,実験室での結果をどのように微小地震のスケールまで拡張できるかはよくわかっていなかった.ランダムな方向を持つベクトルの和の大きさは一般にその個数のルートに比例することが理論的に予測できたので,圧電効果の強さは破壊域の体積のルートに比例すると仮定して実験結果を外挿し、ノイズレベル10mVを超える電位変動をもたらすマグニチュード,震源距離についての条件を求めた.その際、電気伝導度の違いも考慮した.しかし、今までのところ,この条件を満たす地震は発生していない. 一方、地震波が到着した時の電位変化は数多く観測された.アンテナから90mほど離れたサイトに設置してある地震計記録(速度),及びそれを積分して得られる変位波形と比べると,速度波形に似ているようである.地震波が透過したときに、圧電効果によって周囲の岩石の歪みに比例した電位変化が生じた可能性もある.その場合,地震波到着より前に変化が現れてもよさそうであるが,これまでのところ,そのような信号は見つかっていない.
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