研究概要 |
平成22年度は、固液2相系・多成分系マントル対流3次元シミュレーションプログラムのうち、物質の移動を計算する部分の構築を集中的に実施した。これは、応募者が中心となって開発を進めている3次元箱型熱対流基本プログラムをベースとし、これに必要な機能を順次追加することによって実施したものである。 まず最初に、応募者らが共同で開発した、高度な移流方程式ソルバの3次元対流計算プログラムへの導入を行うとともに、解析解と数値解との比較によりその有効性も確認した。このプログラムを用いて、大陸移動の効果に加えて、密度の異なる2成分からなる混合流体の熱・組成対流の効果を取り入れたマントル対流シミュレーションを実施した。これにより、マントル深部の熱・化学的不均質構造の発達と地表面での超大陸の配置・移動との関係を議論することが可能となった。この成果は地球惑星科学連合2010年大会で発表するとともに、現在は論文投稿に向けた作業を進めている。 これに加えて、液相の運動を取り扱う手法の開発も行った。ここでは、固相に対する液相の相対運動を浸透流としてモデル化する方法を採用した。なおこの取り扱いの基本となる手法は1次元の剪断帯モデルにも適用され、地球科学的問題に対する有効性も実証できた(Ujiie,Kameyama,Yamaguchi,2010)。加えて、固相と液相の両方がそれぞれに運動する状況の取り扱いを可能にした。この際、固相の運動は、固相と液相の混合比の違いによる密度変化によって駆動されるものと仮定している。液相が固相より「軽い」場合と「重い」場合、及び浸透流の効果が大きい場合と小さい場合、のそれぞれの状況でテスト計算を行い、プログラムの正常動作が確認できた。
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