研究課題/領域番号 |
22340127
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
亀山 真典 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (70344299)
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キーワード | マントル対流 / 数値シミュレーション / 熱・組成対流 / 移流方程式の数値解法 / 浸透流 / 沈み込み帯 |
研究概要 |
平成23年度は、多成分系・固液2相系のマントル対流3次元シミュレーションプログラムのうち、(i)固体の流動を計算する機能の向上と、プレート沈み込み帯での固体マントルの流れ場をモデリングする手法の確立、及び(ii)物質の移動を計算する機能の構築、の2つを集中的に行った。(i)ではまず、ベースとなるACuTE法を用いた3次元箱型プログラムのうち、非弾性流体近似に基づいた求解ルーチンを修正し、静水圧下の圧縮による固相の体積変化がある場合の流れ場の求解を可能にした。同時に、Fortran90規格では非標準であった機能を排することで、地球シミュレータ2を含む広汎な計算機環境での正常動作を実現した。さらに今後の固液2相系でのシミュレーション研究の適用事例の1つとして、プレート沈み込み帯に注目したモデリングを開始した。ここではまずプレート沈み込みによって駆動される固体マントルの流れ場を求める手法を確立し、予備的なシミュレーションを実行することにより、マントル遷移層で停滞するスラブの上部も含んだ「大きなマントルウェッジ」内で上昇プルームが発生するまでの新たなシナリオを提案した。なおこの成果をまとめた論文は既に雑誌Geophysical Research Lettersへの掲載が決定している。また(ii)では、(a)FCT (Flux-Corrected Transport)法による移流方程式ソルバの導入、(b)Darcy則に基づく固相と液相の相対運動の計算、及び(c)2相系流体の運動と熱対流運動のカップリングを行う機能を追加し、中規模モデルによるテスト計算によりその動作を確認した。特に(a)でFCT法を導入したことにより、従来の手法では取り扱いが困難であった発散を伴う流れ場による物理量の輸送をうまく取り扱うことが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発散を伴う速度場による輸送方程式の多次元での解法に困難を抱えていたが、今年度の成果により克服することができた。また従来の計画では、固液2相系での対流シミュレーションの適用事例として主に核・マントル境界の現象のみを想定していたが、今年度の新たな試みによりプレート沈み込み帯でのマントル対流・流体移動過程への適用可能性を広げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は他機関の共同研究者の協力も得て、シミュレーションに必要となる基盤技術の開発とシミュレーションプログラムへの実装、及びシミュレーション研究の実施とデータ処理の作業を適宜分担しながら推進しでいく。具体的には、研究代表者が平成23年度途中より招聘主任研究員として参画することとなった、独立行政法人海洋研究開発機構の保有する大型計算機(地球シミュレータ2など)の大規模リソースの利用、及び同機構の地球内部ダイナミクス領域のメンバーを中心とした共同研究者との緊密な連携を意図している。
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