研究課題/領域番号 |
22340127
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
亀山 真典 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (70344299)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マントル対流 / 数値シミュレーション / 移流方程式の数値解法 / 熱・組成対流 / 断熱圧縮 |
研究概要 |
平成24年度は、多成分系・固液2相系のマントル対流3次元シミュレーションプログラムのうち、(i) 固体の流動を計算する機能の向上と実問題への適用、及び (ii) 物質の移動を計算する機能の構築と予備的シミュレーション、の2つを集中的に行った。 (i)ではまず、ベースとなるACuTE法を用いた3次元箱型プログラムのうち、非弾性流体近似に基づいて流れ場と熱輸送を解く各々のルーチンを修正し、静水圧下での強い断熱圧縮による固相の体積や温度の変化が生じうる場合の取り扱いを可能にした。またこのプログラムを用いて、近年太陽系外に相次いで発見されている巨大地球型惑星「スーパー地球」内のマントル中での熱対流シミュレーション研究を開始した。計算結果の詳細は現在解析中であるが、スーパー地球マントルのダイナミクスや熱輸送に関して、並行して行った半解析的研究の結果と調和的な結果が得られている。なおこの一連の成果はこれまで計3編の論文としてとりまとめを進めており、うち2編は既に雑誌 Geophysical Journal International と Icarus へ投稿中である。 また(ii)では、地表面付近で生じる火成活動によって起こる物質分化の効果を (擬似的にではあるが) 取り入れたマントル対流シミュレーションプログラムの開発を行った。これは応募者らが共同で開発した CIP-CSLR法に基づく高度な移流方程式ソルバを用いて、密度の異なる2成分からなる混合流体の熱・組成対流シミュレーションプログラムを高度化したものにあたる。これによって、沈み込みによってマントル深部に持ち込まれる物質の挙動とマントル深部の熱・化学的不均質構造の発達の関係、さらにはそれらと地表面での超大陸の配置・移動との関係をより深く議論することを目論んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多成分系の熱・組成対流や体積変化を伴う流れ場の取り扱いを可能にする手法の開発や高度化が順調に進んでいる。また「スーパー地球」のマントル対流シミュレーションに代表される、これらのシミュレーションプログラムの「スピンオフ」ともいえる研究成果も挙がっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、前年度までに開発したプログラムのさらなる高度化、及び開発したプログラムの実問題への適用、の2つを並行して行う。プログラム高度化の作業では、多成分系の熱・組成対流のシミュレーションにあたって、各成分ごとの力学的性質の違いを適切に取り込んだモデルの開発を重点的に行う。これはマントル内に沈み込んだ低温かつ高強度なプレートと、その周辺に発達する「大きなマントルウェッジ」のダイナミックな挙動をモデル中で再現する上で重要な鍵となるものである。具体的には、環境条件(温度・圧力など) や各成分の混合比の違いに起因して粘性率に大きな空間変化がある場合でも安定的なシミュレーションが実現できるよう、流れ場ソルバの頑健さを向上させる。またモデルの境界での流体の出入りを許すような熱的・力学的境界条件を導入する。これにより例えば核・マントル境界やマントルウェッジなどの局所的現象の取り扱いにモデルの対象を限定する代償として、高い時空間解像度を用いた数値モデリングを可能にする。実問題への適用にあたっては、対流するマントルでの温度・物質の分布・移動に関するシミュレーションを行う。ここでは特に、沈み込んだプレートがマントル遷移層で「横たわる」際に生じる「大きなマントルウェッジ」のダイナミクスに注目し、プレートの沈み込みとマントル遷移層内での熱や物質の移動を考慮したシミュレーションプログラムの構築と、シミュレーション研究を実施し、プレート沈み込み帯地域でのテクトニクス・ダイナミクスと沈み込むプレートとの因果関係を検討する。
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