最終年度となる平成25年度は (i) 多成分系・固液2相系のマントル対流3次元シミュレーションプログラムに含まれる、固体の流動を計算する機能のさらなる高度化、及び (ii) 開発したプログラムを用いたシミュレーション研究、を行った。(i) ではまずベースとなる ACuTE 法を改良した3次元箱型プログラムを用いて、静水圧下での強い断熱圧縮の影響を考慮した熱対流シミュレーションを実施した。これにより、近年太陽系外に相次いで発見されている巨大地球型惑星「スーパー地球」内のマントル内の熱対流の様式が地球のそれと大きく異なることを見出した。この成果は3編の論文として既に掲載済であり、さらに2編が投稿中・投稿準備中である。また多成分流体の各成分ごとの力学的性質の違いを反映するものの1つとして「粘性率の異方性」を考慮した3次元熱対流シミュレーションプログラムを開発した。このプログラムはマントル対流の3次元シミュレーションでは世界で初めて粘性率に異方性がある場合の取り扱いを可能にしたものであり、線形解との比較によりその正常動作を確認できた。(ii) では地表面付近で生じる火成活動によって起こる物質分化の効果を (擬似的にではあるが) 取り入れたマントル対流シミュレーションを系統的に実施した。その結果、現在の地球で想定される程度の量の海洋性地殻の沈み込み・堆積の効果のみでは、地球内部で観察されている Large Low Shear Velocity Provinces (LLSVPs) 様の大規模な化学的不均質構造を形成するには不十分であることを指摘した。この成果は現在、地表面に「大陸」という力学的性質の異なる構造の影響も加味したシミュレーションに発展し、これらの結果を踏まえた上で論文のとりまとめを進めている。
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