研究課題
月面の温度環境で初期の精度、1ミリ秒角を達成できる望遠鏡を開発する目的で、回折レンズを用いた対物レンズを設計し、温度変化の星像中心位置に与える影響をシミュレーションで調べた。1ミリ秒角を達成するための温度条件は±5℃以下と、従来の屈折レンズを組み合わせた対物レンズに比べて1桁以上温度条件を緩和できることを示した。しかし、さらに、温度変化の影響を軽減するために、一様、軸対称、水平勾配等、種々な温度変化に対する星像中心位置のずれの大きさ、方向と場所との関係をシミュレーションによって明らかにし、それらの影響を変位のパターンを関数で近似して補正することを試みた。その結果、補正可能な温度変化の範囲は10℃以上とさらに緩和され、回折レンズと組み合わせることによって、月面での温度環境の中で、多層断熱膜やヒータによる保温を行うことによって、初期の目標精度を達成できる見通しを得た。つぎに、レンズの温度や放射線による劣化の影響を調べるために、まず、回折レンズを含む市販のカメラレンズに対して、月面の温度変化に相当する熱真空試験と、月面で1年間受けるガンマ線に相当する放射線試験を行った。その結果、透過率や回折効率については、多少の劣化は認められたものの、観測可能な許容範囲に収まった。しかし、反射防止膜に微小なひび割れが検出された。それを解決するために、多層反射防止膜に代わる有機膜等について、温度変化の影響を温度試験で調べたところ、かなりの改善が見られた。今後、月面環境の熱真空試験で詳しく調べる必要がある。
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Proc.Int.Symp.Terrestrial Gravimetry : Static and Mobile Measurements 2010, St.Petersburg, Russia
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Science in China