研究課題/領域番号 |
22340130
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
篠原 宏志 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究グループ長 (80357194)
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研究分担者 |
森 俊哉 東京大学, 理学系研究科, 准教授 (40272463)
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キーワード | 火山ガス / 火山噴火 / 火山活動観測 / 脱ガス過程 / 浅間山火山 / 阿蘇火山 / 火口湖 |
研究概要 |
H22年度秋に、浅間山山頂火口縁の二カ所に火山ガス組成連続観測装置を設置し観測を開始し、約一年半連続観測を継続している。本装置は東京大学地震研究所のLANを通じてデータダウンロードが可能であり、火山ガス組成の経時変化及び装置の異常の随時モニターを行っている。H23年度には山頂の過酷な条件での長期連続観測が原因と考えられる装置の不具合がいくつか生じ、安定した観測のための装置の改造を実施した。例えば、夏期における外気温度と観測室内温度の温度差がガス観測装置内に結露を生じることが判明したため、装置の保温対策を講じた。約一年間の連続観測中には、センサー感度の経時変化による見かけの組成変化が観察されたが、装置交換による感度校正を行った結果、CO2/SO2,SO2/H2S,H2O/SO2,H2/SO2の各組成に変動が生じていない事が確認された。浅間山では最近2年間は顕著な地殻変動や噴煙放出量の変化が生じておらず、火山ガス組成が安定である事と整合的である。 H23年度初頭に阿蘇火山湯だまりの枯渇と小規模な土砂噴出が生じたため、緊急の現地観測を実施するとともに阿蘇火山での連続観測を急遽開始した。携帯型のMulti-GAS(多成分センサーを用いた噴煙観測装置)およびアルカリフィルターによる現地観測では、通常は湖水中での言おう生成反応により大きな値を示す火口湖ガスの組成のSO2/H2Sが大きく減少したものの、その他の組成に大きな変動はなく、供給ガス組成が安定である事が示唆された。繰り返し観測により得られた火口湖ガスと高温噴気の組成の比較評価を行い、地下の熱水系における高温噴気と火口湖から放出される火口湖ガスの分別過程のモデル化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連続観測装置3台の運用により、連続観測における問題点の抽出と改善が進行した。浅間火山では活動の変化が生じておらず、目的とする活動の変化に伴う組成変動の検知は実現されていない。阿蘇山では活動と火山ガス組成の変化が観察されたが、モデル化の結果熱水系における分別による火山ガス組成の変動と解釈され、マグマ脱ガス条件の変動ではないと推定された。そのため火山活動変化と組成変動の関係を明らかにするには至っていない。ヤスール火山調査は年度を延期して実施し、現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
ヤスール火山における火山ガス組成変動の評価を進めるとともに、浅間山、阿蘇山における連続観測の観測手法の改善及びデータの詳細解析により、火山ガス変動の検知能力の向上を図り、活動の変化とのより詳細な比較を可能とする。
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