平成22年度から浅間山山頂火口縁にて継続している火山ガス組成連続観測の結果を解析し火山ガス観測の誤差の原因の推定とデータの評価を行うとともに、それ以前から実施していた繰り返し観測の結果と総合し長期的な火山ガス組成変動についても評価した。浅間山の火山ガスは山頂火口底中央の火孔が主要な放出源と考えられるが、その周囲および火口壁周辺にも多数の噴気孔が存在しているため、火口縁に設置している観測装置に流れてくる噴煙は様々な噴気の影響が混入している。周辺の噴気孔は温度が低く、ガス組成もCO2/SO2が大きいなど、主火孔のガスとは異なっている。主火孔のガスの放出量が大きいため、主火孔起源の火山ガスが観測された場合には高濃度のSO2が検出すると期待される。そのため低温噴気ガスの影響を除去するために、組成とSO2濃度の相関を解析し、高SO2濃度測定時に特徴的な組成を抽出することにより、主火孔起源ガスの組成を推定した。これにより得られた火山ガス組成は、連続観測実施期間の2年間に顕著な変動は見いだされなかった。 浅間山では2-3年毎に火山ガス放出量が高い時期と低い時期が繰り返されており、高放出量期の初期に噴火が生じている。本研究期間中は低放出量期であったが、低放出量期には主火孔起源ガスに対して周辺低温ガスの影響が大きくなるため、繰り返し観測では精度の良い組成の推定が困難であったが、連続観測結果の解析により、低放出量期の組成の定量化が可能となった。その結果、高放出量期と低放出量期では火山ガス組成の顕著な差はないことが明らかとなった。浅間山における継続的火山ガス放出活動は火道内マグマ対流により駆動されていると推定されている。本研究の結果は、噴火直後の高放出量期でも、活動度の低い低放出量期でもマグマ対流は同様の条件で生じており対流速度のみに変化がある事を示した。
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