研究概要 |
黒潮本流は,非大蛇行流路を取る場合,伊豆諸島付近で概ね三宅島・八丈島付近の間を横切り,この付近に明瞭な水温前線を形成する.この水温前線を跨ぐ大気の鉛直構造を伊豆諸島付近におけるマルチサウンディングと定期ヘリコプター便を活用したモニタリング観測を実施した.本研究では伊豆諸島を結ぶ定期ヘリコプター便の機体に気温,湿度,気圧計を搭載し,ヘリコプターの離陸・着陸時の上昇・下降を利用した大気下層の鉛直モニタリングシステムの開発を進めた.平成22年度は,航空機観測に適するような,時定数の小さいセンサーから構成される小型・省電力の観測システムを開発し,観測テストを行った.定期ヘリコプター便に搭載可能となるように観測システムの安定性と安全性の実績を積み,平成22年1月からヘリコプターによるモニタリングを開始した.平成22年3月には,八丈島と黒潮続流上で船舶の2点におけるデュアルサウンディングを実施する予定であったが,東日本大震災の影響により白鳳丸航海が中止なり,八丈島における観測を限定的に行った.これらの現場観測を互いに比較し,観測記録の精度を検証し,本研究で開発したモニタリングシステムが大気境界層における気温・湿度の鉛直構造を充分に捉えていることが示す.今後は,本モニタリングシステムの維持・改良につとめ,大気下層における気温・湿度構造が水温前線に跨いでどのように変質するかを連続的に捉え,温帯低気圧の下で暖気移流から寒気移流へ遷移するなかで,水温前線から大気下層への影響がどのように推移するかの解析を進めていく.
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