研究課題/領域番号 |
22340137
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安成 哲三 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 教授 (80115956)
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研究分担者 |
藤波 初木 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 助教 (60402559)
林 泰一 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10111981)
里村 雄彦 京都大学, 理学研究科, 教授 (20273435)
佐藤 正樹 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (00255142)
佐藤 友徳 北海道大学, 地球環境科学研究院, 特任助教 (10512270)
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キーワード | アジアモンスーン / 準2週間変動(QBW) / 降水変動 / 季節内変動 / バングラデシュ / アッサム / 日周期変動 / 経年変動 |
研究概要 |
(1)観測データ解析からの成果 高精度降水量データ、全球赤外輝度データ、全球客観解析データ等の解析により、夏季アジアモンスーンの準2週間周期変動(QBW)のメカニズムには、チベット高原を媒介にした中緯度と熱帯の相互作用が大きな役割を果たしている可能性が強く示唆された。即ち、チベット高原の地形により共鳴した順圧的なQBWの中緯度偏西風波動により、アラビア海・ベンガル湾からの水蒸気輸送が変動することにより、アッサム・メガラヤ・バングラデシュ・ヒマラヤ(A-M-B-H)地域の水蒸気収束を変動させ、その地域の顕著な降水量のQBWをもたらしていることが示された。このQBWに伴うA-M-B-H地域での降水量と大気加熱量の大きさは、インド中部のモンスーン活発期と同程度であることも明らかになった。 (2)高精度気候モデル数値実験からの成果 全球雲解像モデル(NICAM)による8年分の夏季数値実験のデータを解析し、季節内変動の再現性を調べた(Satoh et al.2012)。季節内変動に伴うインド洋の降水システムの北進が概してよく再現されており、特に2006年については複数の季節内振動が再現性されていた。また、季節内変動と熱帯低気圧の関係について調べたところ、NIC蝋では観測と同様に、海洋大陸付近で対流が活発な際に熱帯低気圧の活動が活発になることがわかった。 中解像度領域大気モデル(RCM)による短期間ハインドキャストのシリーズ計算を実施した結果、QBWが再現されることを確認した。降水で見た場合のQBWの地域性について調べた結果、バングラディシュ地域の中でも強弱があることが明らかになった。また、高精度のRCM実験では、計算領域の調整を行うことでQBWに伴う大気循環場の精度が向上されることが確認され、高解像度実験によりメガラヤの降水極大と降水の季節内変動が再現された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観測データ解析によるQBWの実態解明は、計画以上に進展した。また、NICAMやRCMによる数値実験では、QBWの再現がある程度進んだが、詳細については、観測事実とまだ整合的ではない部分もあるが、その理由についても、かなり明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
モンスーンのQBW変動は、観測データ解析から、かなり少なくとも半球スケールの大気循環変動と密接に関係している可能性が指摘された。今後、N[CAMを含めたGCM数値実験結果の分析も必要である。またRCM数値実験については、日周変化との相互作用など、このQBWに伴う雲降水システムの機構を明らかにすることも課題であろう。
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