研究課題/領域番号 |
22340139
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松野 健 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (10209588)
|
研究分担者 |
日比谷 紀之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80192714)
張 勁 富山大学, 大学院理工学研究部, 教授 (20301822)
千手 智晴 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (60335982)
遠藤 貴洋 九州大学, 応用力学研究所, 学術研究員 (10422362)
|
キーワード | 日本海深層水 / 乱流計測 / 乱流エネルギー散逸率 / 深層循環 / LADCP / 希土類 |
研究概要 |
前年度に引き続き、深海乱流計を用いて、3000mを超える日本海深層の微細構造を直接計測し、鉛直混合の強さを定量的に評価すること、並行して、溶存酸素などの化学トレーサーの分布から冬季の沈み込み水の水平移流の寄与を見積もることを目的とした。 前年度の調査が冬季であったのに対し、今年度は夏季に淡青丸によって実施された観測と、それによって得られたデータの解析を主として行った。深海乱流計(VMP5500)による深層におけるマイクロスケールの乱流計測、LADCPによるファインスケールの流速構造の測定、浅海用の微細構造プロファイラーによる乱流構造の繰り返し観測、さらにCTD観測とそれと同時に行った化学成分分析用の採水を行った。調査海域は津軽海峡西方の日本海盆東部海域とし、比較的狭い海域に複数の観測点を設けた。 VMP5500による乱流計測を3測点で行い、繰り返し観測を含めて計5回の投入・回収を行った。得られた乱流エネルギー散逸率は1000m以浅を除いて10の-10乗以下の値であり、前年度と同様、深層での乱流強度は非常に弱かったと考えられる。CTDによる水温・塩分の鉛直分布も、2500m以浅では弱いながらも若干の成層が見られるのに対し、それ以深ではほぼ一様な分布になっていることが確認されたが、上述のように、2500mを境としてそれ以深で乱流が強くなる傾向は見られなかった。一方、CTDと共に降下させたLADCPによる流速分布の解析を進め、全層に亘って鉛直波数の小さいシアーを持った水平流が見られること、シアー自体は底層で若干大きくなる傾向にあることが明らかになった。 1000mより浅い水塊について化学成分の分析を進めることで、相対的に高酸素の水が日本海盆東部にも断片的に現れていること、その高酸素水の希土類の組成が類似していることから、それらが最近沈み込んだ水であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に続いて、日本海の東部海域で深層乱流の計測を実施でき、季節が異なっているにもかかわらず、概ね同様の計測結果が得られ、日本海底層では乱流混合は概ね弱いことが確認できたことで、当初予測された結果とは異なるが、日本海深層の乱流強度を信頼できる結果として得られたことは、初めての知見であり、本課題の第一の目的を概ね達成できたと評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度と今年度の観測結果により、日本海底層では乱流強度は小さいことが確認されたことを受けて、次年度には、日本海底層の特徴的な鉛直構造、1000mに亘る密度一様層があり、その構造を維持しながら、水温が長期的に上昇していること説明するシナリオを明らかにすることを目指す。
|