研究概要 |
プラズマの大きな密度構造が次第に小さな姿へと形を変えていくカスケードは,電離圏のみならず広く宇宙空間に存在するプラズマの動態にかかわる過程である.これまで観測装置の制約のために,電離圏でのカスケード過程の実証が不十分で,未だその詳細が謎のままである.本研究では,電子増倍機能を有する次世代の高感度デジタルCCDカメラ(EMCCD)をノルウェーのスヴァールバル諸島ロングイアビンに配置し,メソスケール密度構造のカスケード過程を明らかにすることを目的としている. 本年度はまず,観測装置の製作,ロングイアビン現地調査,データ解析システムの構築を進めた.観測装置は,魚眼レンズをもつ光学系とEMCCDカメラ,複数の波長での観測を可能にするフィルターターレットとその電源駆動装置,ネットワーク接続ストレージ,さらにこれら全体を制御する2台のコンピュータをあわせたシステムとして製作した.ネットワーク経由で簡単に観測条件を変更できる柔軟なシステムにした.10月に行った現地調査では,観測装置を置く予定のドームとその周りの状況を詳細に調べた.データ解析システムは,これまでの研究で用いてきたシステムと共通する部分が多くあるため,そのシステムを改良することで構築した. システムの構築と並行して,関連する過去の衛星のデータ解析も進めた.本研究で対象としている現象には,極域の電離圏に太陽風から直接降り込むイオンの振る舞いが関与していることが予想される.イオンの降下をリモートセンシングする衛星のデータ解析の結果,太陽風からのイオンの降り込みは,ある一定の条件が満たされると極域電離圏で経度方向に分離した2つの領域で卓越することが分かった.
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