研究課題
主として月の海に分布する断層や褶曲は,月の起源や進化を制約する情報を提供する.そこで,かぐやのデータ月のテクトニス史,特に応力と歪みの歴史を再検討することを目標として研究を行った.利用したのはかぐやのLISMとLRSのデータと,最近公開された米国のLunar Reconnaissance Orbiter Camera (LROC)による高分解能地形画像およびGRAILによるセレノイドである.時代変遷を検討するために,約20億年前と30億年前の海の溶岩ユニットが広く分布する雨の海北西部を研究対象地域として選んだ.それらの年代の前後での変形量の差から,変形量の時代変化を捉えるためである.まず,この地域のユニットのクレータ年代を検討したが,従来の年代値と大きな差はなかった.また,直径数百m以下のインパクト・クレータのdegradationも構造形成年代の手がかりとして利用した.こうした年代制約から,次のことがわかった.(1) 断層によらず,褶曲のみによる水平短縮量は従来考えられていたより桁違いに小さく,LISMの分解能で検出することはできなかった.(2) リッジに沿った逆断層で切られて水平短縮したクレータ群やlobate scarpの変位量から地殻短縮量が定量化できた.(4) しかしそれはたかだか500mほどで, LRSの分解能で水平短縮量を推定することはできなかった.(5) LISMやLROCで見いだされた断層変位から,30億年前から現在まで断層変位は累積していることがわかった.(3) 差し渡し約500kmの研究対象地域において,総短縮量は数百mであった.すなわち歪みは0.01%のオーダーである.これが海の短縮量を代表するなら,月の半径が全球冷却で約1km減少したという通説にくらべ,この総短縮量は有意に小さい.(5) 伸張テクトニクスは36億年前に終わったとされていたが,この地域では局地的ながらも,最近まで継続していた..
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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