研究課題
カルサイトが受けた力によって結晶内部に双晶変形が生じる特性を用いて,岩石やコンクリートが過去に受けた力を読み取る手法を確立し,岩石力学の基礎研究や建築物の安全評価への応用に道筋を示すことが本申請研究の目的である.カルサイト結晶の双晶密度によって天然の岩石が過去に受けた力を推定する方法は,申請者らにより提案されているが(Sakaguchi et al.,2011),(1)天然結晶は初生的に双晶変形を含む,(2)粒子毎の双晶密度測定が煩雑,(3)大きな結晶でないと低応力に適用できない,という問題があった.粒状体の応力計として基礎研究および建築物に応用するためには,内部に双晶変形を含まない人工カルサイトの合成と,より簡便な応力推定方法の確立が必要であった.そこで本年は,カルサイト合成方法の効率化と,低応力状態でも簡便にかつ正確に測定できる方法を試みた.カルサイト合成実験:小型オートクレーブの実験でこれまでに明らかになった結晶合成の最適条件で,大型オートクレーブで実験した.その結果,大きな気液表面積が結晶成長を阻害することが明らかになった.応力測定法:上記の合成実験で生成されたカルサイト粒子で集合体を作成し,これを一軸圧縮試験した.その結果,載荷重に比例して双晶変形した粒子の割合が増えることを確認した.これは個々の結晶粒子の双晶密度を測定することなく,双晶変形の有無を確認するだけで古応力がわかることを意味する(特許出願準備中).しかもこの手法なら,双晶密度の平均値に基づく従来の方法では測定が難しかった10MPa以下の古応力を精度良く測定することができる.合成カルサイトの集合体をコンクリート構造物等に設置することで,何らかの応力イベントがあった後に,双晶変形した粒子の割合を測定することから,以前に受けた載荷重を推定することができるようになるだろう.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 2012 その他
すべて 学会発表 (7件)