研究課題
今年度の最大の目標として、世界最速の堆積速度をもつ海洋酸素同位体ステージ19の堆積物コアを採取することを目ざした。2010年5月に千葉県養老川上流域の地質調査を行ってコア採取地点を決定し、業者を選定し同年7月30日~8月31日まで掘削作業を行った。全長54mの連続コア試料を定方位で採取した。コアの処理は高知大学海洋コア総合研究センターの設備を使って慎重に行った。コアは半割後、X線CT、磁化率測定、コア表面の写真撮影を行った。半割コアからu-channel試料を作成した。全長54mのうち44mのコアの処理を済ませた。マツヤマ-ブリュンヌ(M-B)地磁気極性トランジションの探査の目安となる白尾火山灰層を深度39.50~39.54mに確認し、その直下の39.7m付近に白色パミスを確認した。予察的に一部のu-channel試料の古地磁気測定も行い、コアの定方位採取が成功していることを確認した。大阪湾1700-mコアのM-B地磁気極性トランジションのデータを増強するために、海洋酸素同位体ステージ20の氷期の淡水成層の古地磁気分析を行った。その結果、M-B地磁気逆転のプリカーサーに対比される小反転イベントと古地磁気強度の減少を見つけた。これにより深海底コアの相対古地磁気強度との対比がしやすくなった。また、ステージ19以外の間氷期には最高海面期に寒冷化が起こっていないことをステージ11と21で確認した。本研究では、複数の地点でM-B地磁気極性トランジションを観測し、そこで寒冷化が起こったかどうかを調べることが主要目的である。これまで別の研究プロジェクトで進めてきたインドネシア・ジャワ島サンギランの更新世堆積物の古地磁気研究から大阪湾1700-mコアと同じようなM-B地磁気極性トランジション記録を得ることに成功した。今後、ジャワ島サンギランの更新世堆積物も本研究の対象に加えることができ、次年度は古地磁気強度の測定も行う。
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