研究課題/領域番号 |
22340154
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
兵頭 政幸 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 教授 (60183919)
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研究分担者 |
加藤 茂弘 兵庫県立人と自然の博物館, 自然・環境評価部門, 主任研究員 (50301809)
岡田 誠 茨城大学, 理学部, 准教授 (00250978)
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キーワード | 地磁気逆転 / 寒冷化 / スベンスマルク効果 / 宇宙線 |
研究概要 |
ブリュンヌー松山地磁気逆転トランジションの詳細な磁場変動、気候変動を調べるために採取した房総半島の上総層群国本層の定方位ボーリングコア試料について、古地磁気分析を行った。深さ14mから51.24mの区間について1cm間隔で測定を行い、3080点(全測定点の92%)から最大角偏差が15°以下の固有磁化成分(ChRm)を得た。ChRMの偏角・伏角から求めた仮想地磁気極(VGP)から、深度38.8mより下位に多数の極性反転を伴う地磁気極性反転ゾーンの存在を明らかにした。極性反転ゾーンは最下部まで続き、長さは少なくとも13mにわたる。相対古地磁気強度は、コア最下部でも低い値を示しているので逆転トランジションはさらに下へ続いていると考えられる。逆転トランジション中に少なくとも17回の反転が起こっている。火山灰層序等から見積もった平均堆積速度は約300cm/千年となり深海底堆積物の速度の15倍~100倍以上ある。堆積速度60cm/千年の大阪湾堆積物の逆転記録とは、極性反転回数は異なるが、共通した特徴は多い。弱い古地磁気強度が数千年継続する点は共通する。大阪湾で見つけている宇宙線量増加に起因する寒冷化が房総でも見つかる可能性が高まり、今後の古気候の調査に期待がかかる。 今年度は、他に中国黄土高原におけるレス・古土壌層の試料採取を行った。楊天水中国地質大学教授の協力を得て、地磁気逆転をはさむ厚さ7mの堆積物試料を採取した。また、大阪湾堆積物コアのステージ31の間氷期に起こったハラミヨ下限の地磁気逆転についても調べ、寒冷化が起こっていることを発見した。さらに、ステージ31から17までの間氷期についても古環境分析を行って、地磁気逆転を伴わない関氷期には寒冷化は起こっていないことを確認した。これについては国際誌に投稿予定である。インドネシア・ジャワで見つけたブリュンヌー松山地磁気逆転トランジションの詳細な磁場変動の論文がインパクトファクターの高い米国の国際誌に採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
房総の堆積物コアの古地磁気分析が、今年度になってようやく全国共同利用施設である高知大学海洋コア総合研究センターの設備が使えるようになり成果が出はじめた。この点は少し遅れているが、大阪湾堆積物コアからの新たな成果を踏まえて、概ね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
房総の堆積物コア、中国黄土高原のレス・古土壌試料の磁気分析を進め、信頼度の高い地磁気逆転トランジションのデータを得る予定である。同時に、房総コアについては花粉分析、化学分析、有孔虫化石を用いた酸素同位体分析、レス・古土壌試料については環境磁気分析を行って信頼度の高い古気候データを取得する。唯一の予定外は、堆積速度が当初の見積もりの3倍と速かったため、有孔虫や花粉化石の含有量が少ないことである。この点は、使用する堆積物の量を増やして、分析項目に優先順位をつけて分析している。
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