研究課題
大阪湾1700-mコアの分析データから大きな成果があった。古環境解析の追加実験は、ステージ17、21、25が氷河性海面上昇ピークと最温暖期が同位相で起こる典型的な間氷期であるのに対し、最温暖化が海面上昇ピークより4-5千年遅れるステージ19と31は異常な間氷期であることを明らかにした。両間氷期はどちらも地磁気逆転を伴い、最高海面期に気温が1-3℃低下する寒冷化は、地磁気強度が40%以下に減少する期間と一致する。逆転後の地磁気強度回復に合わせて気温が急上昇し、最温暖期を迎えている。同様な地磁気逆転直後の最温暖期は、他の複数個所の中緯度域でも観測されている。逆転に伴う地磁気強度減少期に銀河宇宙線は40%以上に増加している。寒冷化は、銀河宇宙線の増加が下層雲を増加させ(スベンスマルク効果)、日傘効果がもたらしたと考えられる。783kaから778kaの主要な地磁気強度減少期に加え、766-767kaの短期間(<500年)にも40%以下に地磁気が減少し、その時にも寒冷化が起こっている。以上より、地磁気が銀河宇宙線の変調を介して気候に影響を及ぼす、と結論した。これらの成果は米科学アカデミー紀要に公表した。中国レス・古土壌層の古地磁気分析では、含鉄ケイ酸塩鉱物が土壌化に伴う帯磁率増加に寄与する可能性を見つけ、また、強い土壌化はレスの古地磁気強度記録を変質させることを明らかにした。これらの成果は、レス・古土壌層を使った地磁気と気候の研究は慎重に進める必要があることを忠告する。房総半島上総層群のコアはマツヤマ―ブリュンヌ地磁気逆転トランジション開始直後から強度回復後までの記録であることを明らかにした。房総コアの花粉と有孔虫化石の含有率が極めて小さいことも分かり、露頭において追加試料を採取した。これらの分析を急ぎ、気候層序との関係を検討する必要がある。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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