研究課題
地球温暖化に伴って、数十年スケールで大変動する太平洋のイワシ資源は、今後どのような変動を示すのか。中世温暖期におけるイワシ資源量の低下期に着目し、中世温暖期におけるイワシ資源量の数十年スケール変動の振幅と周期性が、それ以外の時期と比べどのように変化したか、数十年スケール変動の様態変化がどのようなメカニズムによって引き起こされたかを古水温・低次生産指標を用いて解明を試みてきた。平成25年度は、苫小牧沖コアの年代測定を行い、その年代決定に基づいた解析を進めるとともに、別府湾コアのイワシ類の数十年スケール変動のメカニズム解明に関する解析を行ってきた。その結果、マイワシには、数十年スケール変動の最大値が大きく変動する数百年スケールの変動が見つかった。また、苫小牧沖コアの解析の結果、マイワシが回遊する親潮域の餌の指標となるSCEsやクロロフィルaとその分解物に、マイワシと類似したパターンを示す数百年スケール変動が見つかった。これは、マイワシの動態に、親潮域のようなマイワシ回遊域の餌環境とそれを支配する栄養塩供給が関連しているものと推察された。昨年度は温暖な海洋環境で、数十年間続くマイワシレジームが消失することはないことがわかったが、その一方で、数百年スケールでマイワシレジームが消失する時期が過去1000年で何度も訪れたこと、現在を含む200年間は高振幅期でマイワシレジームが3回認められたこと、さらに現代の高振幅期はすでに200年経過していて、300年周期性が卓越する過去1000年間の変動の時間スケールを考慮すると、今後顕著なマイワシレジームが認められない100年規模の低水準期を迎える可能性があることがわかった。当初の目的であった中世温暖期前後における周期・振幅の変容に関する知見が得られ、本研究の目的は達成された。今後、成果の迅速な公表が最大の課題である。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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