研究課題/領域番号 |
22340156
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田中 裕一郎 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (50357456)
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研究分担者 |
柳沢 幸夫 独立行政法人産業技術総合研究所, 主任研究員 (10358210)
桑田 晃 独立行政法人水産総合研究センター, 東北区水産研究所, 主任研究員 (40371794)
白岩 善博 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (40126420)
萩野 恭子 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 非常勤研究員 (90374206)
山崎 智恵子 秋田大学, 工学資源学部, 客員研究員 (60597186)
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キーワード | 生物進化 / 培養実験 / 古環境 / 円石藻 / 珪藻 |
研究概要 |
海洋における珪藻および円石藻の春季ブルームの形成過程を解明のために、両藻類を同時に培養する必要がある。そのために、容器をフィルターで仕切った特別な共存培養器を開発した。珪藻種と円石藻のブルーム形成種をそれぞれ培養増殖させ採取し、開発した共存培養器での共存培養を実施した。その結果、それぞれの増殖が相互に影響され、珪藻がまず増殖を開始し、その後、珪藻の増殖の減衰と共に円石藻の増殖が増大することを観察した。本研究結果は、海洋における同一海域の珪藻と円石藻のブルームの状況を実験的に再現するものであり、海洋における植物プランクトン群集の変動を解析するために有効な実験系が確立できた。 一方、円石藻のブルーム種であるEmiliania huxleyiは、その形態の違いにより増殖特性が異なることが報告されている。そこで、形態と増殖特性との関係を解明するために、仙台沖と五島列島沖の海水からE.huxleyiの培養株の確立を試みた。そして五島列島沖の海水からmorphotype Aとmorphotype CのE.huxleyiの培養株を確立した。 また、珪藻と円石藻の進化過程における生態戦略を解析するために、下北半島沖の深海底コア試料について4000年間隔の試料について、特に、30万年前のブルーム形成種の出現層準の解析を行っている。さらに、第四紀におけるNeodenticula属珪藻形態の時間変遷を解明するために、国際深海掘削計画(ODP)第186節で三陸沖から得られた海底堆積物柱状試料を入手した。また、堆積物に時間軸を与える有孔虫殻の酸素同位体比層序を得るために、質量分析の前処理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物プランクトンブルームを形成し海洋生態系へ大きな影響を与える円石藻と珪藻について、これまで、それらの生息環境に関する研究は個別に行われ、現在及び過去の海洋環境の急激な変化に伴う両藻類間の生態的地位(ニッチ)に関する相互関係は、ほとんど明らかにされていないので、本研究では、円石藻と珪藻のブルーム形成とその遷移機構に焦点をあてて、同時に室内培養実験が行える培養容器の開発とその培養実験実施が重要な課題であった。その培養容器を用いた実験系ができたことにより、当初の計画にそって、ブルーム形成とその遷移を解明できる状態になったことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
植物プランクトンブルーム両藻類のそれぞれの増殖生理的なパラメータを解明する。さらに、開発した植物プランクトン共存培養容器を用いて珪藻ブルームから円石藻ブルームへの遷移機構について解析を行う。また、生物進化過程での両藻類のニッチ関係を明らかにするために、その遷移の詳細なタイミングと相互作用について解析を行う。
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