研究課題
本研究の目的は、米国アポロ計画で回収された月面表層土の粒子物性を高精度に計測し、それを基にした粒子シミュレーションを行うことによって、月面表層の堆積過程を定量的に明らかにし、得られた堆積構造情報をかぐやの月全球情報と組み合わせて、惑星表面の反射率補正の高精度化、クレーター形成定量評価による深さ方向物質分布の解明、将来の将来の月面探査のためのローバー走行性などの検証を行うことである。本年度の研究成果は以下の通りである。(1)SPring-8にて撮影された月面表層土サンプルの高解像度CT画像を解析し、粒子サイズ、粒子形状および粒子内部構造の統計データを取得し、それらの特徴を把握した。(2)地盤工学における標準砂などを用いて、複雑な粒子形状を有する粒子集合体の個別要素法解析の定量性の検討、粒度分布が及ぼす影響などを検討した。(3)かぐやデータ解析に用いる比較データ取得のための地上反射スペクトル取得準備を行った。具体的には、月面模擬サンプルの準備として米国ワイオミング州の斜長岩の岩石薄片を作成し、光学顕微鏡による岩石組織等の観察を行った。なお、模擬サンプルの地上反射スペクトル取得実験は、震災の影響でH23年度の作業とすることとした。(予算の繰越申請済み)(4)かぐやデータ解析を行いて月面マップの作成作業を進めた。(5)位相角可変分光装置を製作した。光源の選択やフィルタ設定、レンズ組み合わせ、試料台等を、本研究目的に適合するように特注し、本年度で完成した。また、暗室などの周辺設備も整え、様々な試料を様々な観測幾何条件で分光測定できるようになった。(6)月の斜長岩の反射スペクトル形状を変える要因の一つと考えられる、含有微量鉄の酸化還元状態変化を、酸化還元電気炉を使って強制的に起こす実験を行った。結果、月面の還元的な環境下でも二価鉄に起因する吸収は保存される可能性が高いことがわかった。
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Granular Matter
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