研究課題/領域番号 |
22340159
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 敏嗣 東京大学, 地震研究所, 名誉教授 (00092320)
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研究分担者 |
安田 敦 東京大学, 地震研究所, 准教授 (70222354)
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キーワード | 火山 / マグマ / 高圧実験 |
研究概要 |
霧島火山新燃岳と桜島火山について,マグマ溜まりの深度を決定する研究を行った.新燃岳2011年噴火では,噴火したマグマの化学分析から,噴出物は珪長質マグマと苦鉄質マグマの混合物ということが明らかになっている.そこで,前年度に引き続きこれらの端成分マグマが由来したマグマ溜まりの温度圧力環境の評価を行った.端成分の全岩組成が判明している珪長質マグマについては,斑晶鉱物温度計で決定した温度(875度)において圧力を変化させた実験を実施し,実験生成物と噴出物との組成や鉱物量の比較検討から,平衡圧力が125MPa (深さ5km)が適当であるとの結論を得た.高温側端成分については,混合物しか得られていないため,斑晶と斑晶ガラス包有物の分析を行い,斑晶組成からマグマの温度が1030度以上, ガラス包有物の含水量と斑晶の形態から,200MPa (深さ8km)以深からマグマが上昇しているという制約を与えることができた.桜島火山についても,噴出物の分析から多成分マグマの関与が明らかになっており,それぞれの端成分マグマが由来するマグマ溜まりの温度と圧力を明らかにすることを試みた.20世紀の噴火では3つのマグマ端成分が関与しており,噴出したマグマから混合前のマグマの端成分を推定することは容易ではないことが明らかになったため,まずは2成分マグマの混合物であり,端成分マグマ組成が推定可能な文明噴火と安永噴火の噴出物の解析を行った.これらの噴火の珪長質側端成分については,鉱物組成,斑晶量,鉱物組み合わせの熱力学的検討から,マグマ溜まりの存在する温度,圧力環境を狭い範囲に限定することができた.すなわち,940-950度で3~4kbである.これは現在の地球物理学的観測で得られている姶良カルデラ直下のマグマ膨張源深度と一致しており,数百年間にわたってマグマ溜まりが活動を継続していることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個々の計画についての進捗状況は凹凸があるものの,全体的には想定計画の4分の3が終了している.
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今後の研究の推進方策 |
基本的には初期計画の方針に従って進める.
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