研究課題
現在活発な活動を続ける桜島火山は錦江湾奥の姶良カルデラの南縁に位置する.この姶良カルデラはおよそ29,000年前に噴出物量数百km3を超える破局的噴火によって形成された.この噴火を引き起こしたマグマ供給系を解明し現在の桜島火山のマグマ供給系と比較するために,姶良火砕噴火の噴出物である大隅降下軽石,妻屋火砕流,入戸火砕流の試料についての岩石学的検討を行った.まず斑晶鉱物の組成分析と斑晶メルト包有物の含水量測定を行い,それらに相平衡を用いた温度圧力計を適用して,およそ800℃,100MPaという噴火前のマグマが滞留していた環境を推定した.さらに,熱力学的手法を用いて作成した相平衡図と実際の噴出物の結晶量との比較からほぼ同様の平衡圧力値を得た.斑晶メルト包有物の含水量は平均4.5wt%程度であり,気泡やメルト包有物形態の観察からマグマは部分的に水に飽和していたことが明らかになった.この含水量が飽和する圧力はおよそ100MPaである.複数の独立な解析結果がマグマ溜りの置かれていた圧力が100MPa程度であること示唆しており,マグマ溜りの上部は深さ4から5km程度の地殻浅部にまで広がっていたと考えられる.これは,姶良カルデラを形成した噴火のマグマ溜りの深度についての従来の見積もりである8-10kmよりもかなり浅く,現在の桜島火山のマグマ供給系とは大きく異なっていることが明らかになった.斑晶組成の不均質性からは,マグマ混合の痕跡は見いだせるものの,その混合量は多くない.カルデラを形成するような大規模噴火の主因は,マグマの注入ではなく浅所に大量に蓄えられた珪長質マグマ溜り全体の含水量が飽和状態に近かったためと思われる.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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