研究課題/領域番号 |
22340161
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
西原 遊 愛媛大学, 上級研究員センター, 講師 (10397036)
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研究分担者 |
川添 貴章 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, グローバルCOE助教 (40527610)
大内 智博 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 助教 (60570504)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 鉱物物理 / マントル遷移層 / 下部マントル / レオロジー / 高圧変形実験 |
研究概要 |
本研究ではこれまで自分たちの培ってきた高温高圧変形実験と精密応力測定の技術を集結することによって、地球マントルの深さ660km上下の物質のレオロジーを定量的に決定し、この深さでの粘性コントラストの大きさを見積もりその地球史における役割を理解することを目指している。平成24年度には、これまでに確立した高温高圧下の定量的変形実験技術に基づき研究を行った。前年度は15GPa, 1700Kの高温高圧条件下でマントル遷移層の主要構成鉱物ウォズリアイトの変形実験を行い、この鉱物のレオロジーの含水量依存性を明らかにしたが、今年度はその温度依存性と歪速度依存性を定量的に明らかにした。その結果、ウォズリアイトの流動強度は含水量に敏感であるのに対し、温度と歪速度にはそれほど敏感でないという予察的な結果を得た。 マントルの660km 付近では沈み込むスラブから剥離する可能性がある。この剥離が起こるか否かは海洋地殻と周囲のマントルの塑性強度によって決まるが、マントル深部条件での関連物質の塑性強度は分かっていない。このため、海洋地殻の主要鉱物メージャライト(Mj)と周囲のマントルの主要鉱物リングウッダイト(Rw)の変形実験を圧力約17GPa、温度1473-1673K の条件下で行い、両鉱物の相対塑性強度を調べた。実験ではSPring-8、BL04B1 に設置のSPEED-MkII-Dを用い、MjとRwを同一の温度、圧力、差応力条件下で変形した。その結果をもとに現実のマントルの歪速度に外挿すると、Mj の塑性強度はRw のそれと同程度かそれ以下であった。現実のマントルでも本実験での変形機構と同一の変形機構が働くと仮定すると海洋地殻成分の剥離は起こらないことが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度以前に開発した技術に基づいた実験により重要な結果が着実に得られている。マントル遷移層の温度圧力条件下でのレオロジーの信頼できる実験データはこれまで非常に限られたものであった。本研究により得られた結果は画期的なものであると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ここまで順調に研究が進展しているので、引き続きマントル遷移層条件での実験によりデータを得ていく。一方で、下部マントルのレオロジーを理解するためにより高圧条件下での定量的変形実験の技術開発も並行して進めていく。
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