研究課題/領域番号 |
22340164
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
遊佐 斉 独立行政法人物質・材料研究機構, 先端材料プロセスユニット, 主幹研究員 (10343865)
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研究分担者 |
平尾 直久 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (70374915)
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キーワード | X線結晶学 / 極限物性 / 高圧力科学 |
研究概要 |
高圧下の粉末X線回折実験は地球内部科学研究のみならず物質合成評価手段としても大きな魅力である。しかしながら、限られた高圧装置内の試料空間での結晶粒サイズの調整の困難さやレーザー加熱等による不可避な結晶粒成長は、均質なX線回折強度の収集に影響し、高圧下での正確な構造解析を阻害する要因になっている。本研究では、高圧装置中の試料に対しガンドルフィーカメラ型多軸揺動を施し、粗粒の粒子からも均質な回折強度を得ることによりその問題の解決を試みている。平成24年度は前年度に設計・試作したDAC用多軸揺動装置を実際に放射光実験施設(SPring-8)に導入して、実際にデータを取得し、装置全体の評価をおこなった。その際、同じく前年作成した特殊形状の開口角を持つDACを用いて、広い範囲の2θを稼ぐとともに、高エネルギーX線源(BLO4B2 38keV)の利用により、エバルト球を小さくし、限られた2θ開口角のもとでできるだけ多くの回折線の本数を検出することを試みた。その結果、0.6Åまでの回折線を高圧下で観測することが可能となった。また、比較的対称性の悪い構造の代表例として、単斜晶系(P21/c)の酸化ビスマス(α-Bi203)に対しリートベルト解析をおこなった結果、揺動しない場合12%あったR値が揺動により7%まで改善されたことが確認された。また、単結晶コランダムを試料に用いて、揺動したところ、均一な粉末回折パターンが得られることも認められ、装置が設計通りに動作することが明らかとなった。また、本年は、試料の位置決め精度を向上するために、装置内の顕微鏡観察系に改良を加えた。さらに、揺動装置を制御するプログラムの構築に着手し、ユーザーフレンドリーな制御系を作成しつつあることを付け加えておく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標準的な試料により回折実験をおこなった結果、揺動装置が設計通りのスペックをもって動作することが確認でき、特許出願もおこない、さらに制御系の構築も順調に進んでいるため、研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本揺動装置において、回折データが改善されることは実証できた。しかしながら、現在までのところ各軸の複合揺動動作と回折に寄与する粒子の増加について、その正確な関連を把握するまでには至ってはいない。もっとも、原型となるガンドルフィカメラにおいても回折点の多重度まで考慮して揺動操作を記述できているわけではない。今後粒子統計の観点から、試料の対称性と多重度を考慮した効率的な揺動方式を追求することを念頭に実験をおこなうことを考えている。
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