研究課題/領域番号 |
22340168
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金子 俊郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30312599)
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研究分担者 |
加藤 俊顕 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20502082)
畠山 力三 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (00108474)
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キーワード | 電子温度勾配 / イオン温度勾配 / プラズマ乱流 / 輸送現象 / フロー速度シア / バイスペクトル解析 |
研究概要 |
核融合プラズマ閉じ込め装置での異常輸送の新たな要因として注目を集めている「電子温度勾配(ETG)不安定性(ETGモード)駆動乱流」の発生メカニズムとそれに伴う輸送現象を解明することを目的として,2年目となる本年度は,前年度の成果で得られた高周波数のETGモードと結合する,イオンが関与する低周波数のモードの励起とETGモードとの相関関係を詳細に調べた. 1.電子温度勾配と密度勾配が存在するとき,周波数~4 kHzの低周波揺動(ドリフト波モード)が観測されており,揺動強度が電子温度勾配の形成された位置で増加していること,および電子温度勾配度に比例して揺動強度が変化することが分かった. 2.バイスペクトル解析を用いてETGモードとドリフト波モードの相関関係を調べた結果,電子温度勾配が存在するときに二つの揺動の非線形結合度が強くなることを観測した.以上の結果から電子温度勾配によって励起されたETGモードが低周波揺動との非線形結合によってドリフト波モードを変調し,その揺動強度を増幅させることを明らかにした. 3.分割型電子源の電位を制御し空間電位の径方向分布,すなわち径方向電場を制御することによって,磁力線垂直方向のE×Bフロー速度シアを形成した.ETGモードとドリフト波モードが励起されている条件で,このE×Bシアを重畳印加したところ,両モードとも大きなE×Bシア強度において抑制されることが分かった.一方で,小さなE×Bシア強度の場合には,E×Bフローの方向が電子反磁性ドリフト方向の場合にはETGモードの揺動強度が,イオン反磁性ドリフト方向の場合にはドリフト波モードの揺動強度が増加することが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイスペクトル解析を用いて電子温度勾配(ETG)モードとドリフト波モードの相関関係を調べることによって,電子温度勾配が存在するときに,周波数が2桁異なるモード間でも非線形結合度が強くなることを観測することに成功しており,本研究の目的であるETGモードの発生メカニズムとそれに伴う輸送現象の解明に向けて着実に進展しているため.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,電子温度勾配(ETG)モードによって引き起こされる異常輸送現象のメカニズムを解明することが目的である.これまでの結果から,ETGによって高周波数のETGモードが励起されるとともに,低周波数のドリフト波モードも励起されることが明らかになっており,このドリフト波モードが乱流状態となり,異常輸送を引き起こすことが考えられる. 従って,次年度は,これらの揺動間でエネルギーがどのように移送されているかをバイスペクトル解析等を用いて詳細に調べて,ETGモードが異常輸送の要因であることを実証する.
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