研究概要 |
核融合プラズマ閉じ込め装置での異常輸送の新たな要因として注目を集めている「電子温度勾配(ETG)不安定性(ETGモード)駆動乱流」の発生メカニズムとそれに伴う輸送現象を解明することを目的として,3年目となる本年度は,前年度までに明らかにした,直線磁化プラズマ中のETG形成・制御による高周波揺動 (ETGモード) の励起と低周波揺動 (ドリフト波モード) との非線形結合について,バイスペクトル解析を用いて詳細に調べるとともに,エネルギー移送についても考察した. 1.ETG変調に対するETGモードとドリフト波モードとの非線形結合:径方向のETGの強度がある閾値 (∇Te~0.7 eV/cm) を超えるとETGモードの揺動強度が飽和し,ドリフト波モードの揺動強度が増大し始めることを観測した.さらに,ETGモード強度の飽和と同時にETGモードとドリフト波モードとの非線形結合度が急激に増加することが分かった. 2.ドリフト波モードとの非線形結合によるETGモードの径方向拡張:ミクロスケールのETGモードがドリフト波モードとの非線形結合によって,ETGモードの波長の約20~30倍程度径方向に拡張していることが明らかになった. 3.ETGモード飽和に起因するドリフト波モード変調に対する非線形結合の効果:ETGモードの規格化振幅強度が閾値 0.4 % (∇Te~0.7 eV/cm) を超えることでドリフト波モードとの非線形結合が助長され, ドリフト波モードの揺動強度が増幅されたことから, ETGモードからドリフト波モードに非線形エネルギーが移送されたと考えられる.以上の実験結果より, ミクロスケールの高周波数のETGモードのエネルギーが非線形結合によって低周波の揺動に移送され, 別の揺動励起に寄与しうることを初めて検証した.
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