研究概要 |
パルサー磁気圏やマグネター(超強磁場天体)などの天体からは、高エネルギー粒子によるシンクロトロン輻射が観測されるが、高エネルギー粒子の起源については、しばしば磁気リコネクションによる可能性が指摘されている。しかし、その物理的メカニズムは理解が乏しく未解決問題が山積している。本研究課題では、よく発達したプラズマシートで期待できる乱流的な磁気島合体に着目した磁気リコネクションの粒子加速の研究を、相対論的電磁粒子コードを用いて進めた。特に、本年度はこれまでに行ってきた3次元性について集中的に研究を行った。 まず、3次元粒子計算を始めるに当たり、計算機コードを、MPIとOpenMPを適宜用いたハイブリッドアルゴリズムに改良し、並列計算効率を高める工夫を行った。 次に、3次元乱流リコネクションの計算を、縦磁場のある相対論的プラズマシードに対して行った。3次元計算では、磁気島が空間的に局在化した構造をもつが、粒子加速は2次元計算と同様に起きることが確かめられた。また、べき分布のエネルギースペクトルはソフトになるが、熱的分布から非熱的分布へと変わるエネルギー帯が低エネルギー側にシフトするので、全非熱的エネルギーのエネルギー密度は熱的エネルギーと同程度もしくはそれを凌駕するまで加速することが分かった。3次元では、リコネクションジェットの相互作用による粒子加速効率は下がるが、加速域に注入する効率が上がるためと考えられる。 また当初の研究目標にしていた輻射減衰との競合過程は、輻射減衰が磁気散逸率を促進することは、我々が既に発表した論文(Jaroschek and Hoshino, PRL, 2009)と同様な効果があることを確認できたが、粒子加速への効果は限定的であった。 以上より、乱流磁気リコネクションの粒子加速が高効率で起きるという重要な結果を得た。
|