研究概要 |
本計画の2年目にあたる平成23年度には,研究計画調書に記載の通り,予混合バーナー火炎に誘電体バリア放電を重畳する実験を行った。まず,様々な電極配位の誘電体バリア放電方式を試みた後,バーナーノズルをアース電極とし,火炎を囲む石英管の外側に設置した電極に高電圧を印可する同軸構造の誘電体バリア放電装置を製作した。メタン・酸素・アルゴンからなる予混合バーナー火炎に誘電体バリア放電を重畳し,火炎形状の変化を調べながら,アルゴンからの発光強度を測定した。放電電圧および放電繰り返し周波数を変化させた実験において,火炎長の短縮量がアルゴンの発光強度の関数として一意に整理できることを示した。また,OHラジカルおよびCHラジカルの回転温度の測定から,誘電体バリア放電の重畳によって燃焼ガスの温度が増加していないことを示した。アルゴンの発光強度が誘電体バリア放電により生成された高エネルギー電子の量を表し,火炎長の短縮量が燃焼速度の増加を表すことから,高エネルギー電子によって燃焼化学反応が制御され,燃焼速度の増加が得られたものと結論した。また,誘電体バリア放電で生成される電子のエネルギー分布関数をモンテカルロ法により計算し,電子衝突解離反応を引き起こすことのできる高エネルギー電子が多数生成されているものと推定した。さらに,平成22年度に継続して,火炎およびプラズマ中のOHラジカル密度を測定するためのキャビティリングダウン吸収分光法の開発を行い,実際にOHラジカルによる吸収信号を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロ波を用いた予混合バーナー火炎中の電子の加熱実験,および,誘電体バリア放電を予混合バーナー火炎に重畳する実験は,研究計画調書に記載の通り,それぞれ平成22年度および23年度に予定通り実施され,成果が得られている。計算機シミュレーションの面でも,マイクロ波加熱時および誘電体バリア放電重畳時の電子エネルギー分布の推定に関しては当初の予定通り順調に進行しているが,高エネルギー電子の効果が取り入れられた燃焼化学反応のシミュレーションにおいて,当初の予定より若干の遅れが認められる。
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今後の研究の推進方策 |
高エネルギー電子の効果が取り入れられた燃焼化学反応モデルの構築が基礎的視点からの本研究の成果となるので,その解明に全力を挙げる。そのために,パルス状の誘電体バリア放電が重畳された予混合バーナー火炎に生じる過渡変化に関する実験が有益な情報を提供すると考えられ,平成23年度に完成したキャビティリングダウン吸収分光法を用いて時空間分解されたOHラジカル密度計測を実施する。また,高エネルギー電子のエネルギー分布についてはモンテカルロ計算の結果を有するのみなので,平成24年度には,可能性が見極められれば,トムソン散乱法による電子エネルギー分布計測にも挑戦したい。トムソン散乱計測に必要な3重回折格子分光器は整備済みで現在調整の途上にある。
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