研究概要 |
本研究の目的は、高強度軟X線レーザー(波長:13.9nm,パルス幅:~7ps,強度:10^<13>W/cm^2以上)と物質との相互作用により初めて実現可能となるX線非線形光学現象を世界に先駆けて観測することにある。特に着目するのは、これまで高輝度X線源の制約により未開領域であった非線形X線吸収に伴う原子の内殻2ホール形成、及び、内殻電離による強結合プラズマ中での多体衝突再結合と呼ばれる新しい素過程である。 本年度は,上記2つの課題のうち,プラズマの発生についての研究を重点的に進めた。実際には,X線レーザー・キセノンクラスター相互作用に伴って発生する光電子,オージェ電子を飛行時間型電子分光器にて計測を行った。その結果,クラスターサイズが大きくなると光電子ピークの位置が低エネルギー側にシフトし,最終的にはマクスウェルボルツマン型の分布関数となることが判明した。この時の温度は数eVと非常に低く,強結合プラズマが発生することを実験的に初めて見出した、現在,この現象が数値計算でも再現できるかを調べるために,分子動力学的なシミュレーションコードを開発しており,結果が出次第,論文投稿する予定である。 一方,より精密な電子スペクトルを得るために,磁気ボトル型電子分光器の設計も開始した。設計では有限要素法による電磁場解析で電子の軌道をシミュレーションし,最適な磁場強度,減速電圧を決定することができた。次年度ではこれに基づいて検出器の製作を行う。
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