今後の研究の推進方策 |
現在核融合分野において、次期核融合炉の炉材であるタングステンが有力な候補となっているが、そのタングステンの多価イオンスペクトルは、プラズマ診断において非常に重要であるにもかかわらず、発光ラインの同定さえ未だ確立されておらず、その整備が世界的に急務となっている。このような状況下で、我々はタングステン多価イオンの研究が急務と判断し、平成25年度においても継続的にタングステン多価イオンのプラズマ模擬実験を行う計画である。また核融合研究分野以外においても多価イオンは注目されており、特にシングルショットで細胞を測定できる水の窓軟X線光源を用いた顕微鏡開発分野においては、高Z物質の多価イオンプラズマからの波長2.3~4.4nmのUTA(unresolved transition array)放射を用いる方法が提案されており、現在研究が進められている。ところが水の窓軟X線スペクトル領域を対象とする高Z物質の価数分離スペクトルのデータベースが不足しているのが現状であり,光源開発も効率的に行うことができない。我々はこの困難を克服するため、核融合科学研究所のCompact EBITおよび電気通信大学のTokyo-EBITを有機的に使い分けて,データベースを構築することを今年度行う計画である。EUV~水の窓軟X線光源を実験室光源に適用するために,この2~7 nm領域に発光を有する可能性のある様々な元素(P, Zr, Mo, W, Au, Pb, Bi)をCoBIT及びTokyo-EBITに導入し価数分離スペクトルを観測する。また、電子ビームを挿引し、水の窓軟X線光源を模擬した電子分布を再現しプラズマ光源からの発光スペクトルの模擬を行い、水の窓軟X線光源を用いた顕微鏡開発の重要なデータを提供する。
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