研究概要 |
(1)時間分解高周波ESRの開発: 既存の30Tパルスマグネットに,300-550GHz帯の後進行波管(BWO)および電源,1-2μ秒の時間分解能をもつInSb熱電子ボロメーターを購入して,時間分解高周波ESRの開発をおこなった。平成22年度は,これら装置の設置ならびに感度および時間分解能のチェックを行った。テフロン製光学系およびセクターを用いてAC結合で時間分解測定をおこなったところ,300-550GHz帯において十分な感度(0.1-0.3mW)および時間分解能(立ち上がり時間:1μ秒)を得た。クライオスタットの液体ヘリウムの保持時間も10時間以上あり,時間分解ESR測定に十分であることがわかった。 (2)磁場効果をプローブとした不均一反応場のナノ構造の解明:メソモーラスシリカMCM-41のナノ細孔中での光化学反応を0-5テスラの磁場下,磁場効果プローブ(MFE Probe)で解析した。その結果,細孔径の違いにより,特に高磁場領域での顕著な磁場効果の差異が観測された。細孔径が小さい場合,溶媒分子の部分的なクラスター化によるミクロ粘性の上昇が原因と考えられる。また,イオン液体のドメイン構造に関しても,MFE Probeにより解析をおこなった。従来の球体モデルでは説明できない緩和速度を,コアシェル型モデルを用いることで説明し,コアシェル構造をつくる溶媒和が,鎖長の短いイオン液体のドメイン構造の起源であることを提唱した。
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