研究課題/領域番号 |
22350009
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宗像 利明 大阪大学, 理学研究科, 教授 (20150873)
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研究分担者 |
山田 剛司 大阪大学, 理学研究科, 助教 (90432468)
加藤 浩之 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (80300862)
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キーワード | 角度分解2光子光電子分光 / 顕微2光子光電子分光 / 非占有準位 / 有機薄膜 / 有機半導体 |
研究概要 |
有機薄膜での電子伝達過程を解明するために非占有バンドからの光電子角度分解測定を行った。これまでにグラファイト(HOPG)上の鉛フタロシアニン(PbPc)薄膜の非占有準位を高分解能2光子光電子分光で測定し、フェルミ準位近傍の占有・非占有準位を明らかにしてきたが、この実績に基づき、本年度は非占有鏡像準位(IPS)と分子由来の非占有準位(LUMO+2)のバンド分散を測定した。有機薄膜は空間的に不均一に成長するが、ここではレーザー光をサブミクロンに集光し、均一性の高い領域を選んで角度分解2光子光電子分光を開発して、再現性が高く、高分解能測定を可能にした。その結果、HOPG上のIPSが真空準位以上でも存在することと、運動量の大きい領域で自由電子的分散からずれることを示した。また、PbPc膜上のIPSは分子の格子からの周期的ポテンシャルを受けてブリルアンゾーン境界でバンドが折り返し、バンドギャップを作ることを示した。この結果は、大筋ではKronig-Pennyモデルで再現できたが、IPSと分子軌道との相互作用を反映して自由電子的モデルとは顕著な差異も生じることを明らかにした。これらは膜上で電子が感じるポテンシャルを実験的に決めるうえで重要である。さらにLUMO+2準位由来のバンドも弱い負の分散を示した。これは、基板を介したπ軌道間の相互作用を反映している。また、ルブレン薄膜では、基板上のIPSと分子軌道の相互作用で、光励起確率が一桁上昇する現象を見出した。光変換の効率向上に有意義である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
表面微小域の角度分解2光子光電子分光は電子レンズの工夫により、計画以上の性能を達することができた。また、STM、LEEDなど分子配置を観測する結果と2光子光電子分光の結果の対応が明確になり、分子間相互作用による電子状態の変化が明らかとなってきている。ルブレンでの異常に強い共鳴励起過程を見出したことは予想外の成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
時間分解2光子光電子分光の精度を向上させて、励起電子の動的過程を明らかにする。特に、本課題の特色である顕微測定を用いることで、有機薄膜の空間的不均一性に煩わされることなく高分解能測定を可能にする。さらに、分子ごとの電子状態が測定できるSTMによる分光法と2光子光電子分光を比較し、分子集合状態と電子状態の相関をより明確にする。また、電界のかかった状態での有機薄膜の電子状態測定を試みる。
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