研究課題/領域番号 |
22350010
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
波田 雅彦 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (20228480)
|
キーワード | SAC-CI / 励起状態 / 相対論効果 / SO分裂 |
研究概要 |
本研究では、重原子を含む化合物の、電子励起状態が関与する化学現象を定量的に解析する理論的方法の開発を目指して、高次相対論を考慮したSAC-CI法による励起状態計算法の開発を行った。 種々の第2周期原子の一重項、三重項の最低励起エネルギーを計算した。本手法の他に、参照計算として、RHFを参照とするSAC-CI法と、摂動でSO項を含むCASPT2法の計算を実施した。本手法は他手法や実験値と比較して三重項励起に対する分裂の実験値を良く再現できており、基底関数の検討など不十分であるが、GUHF-SAC-CI法が他の方法よりも優れていることを示している。また、種々の原子に対するTDMのPicture Change(PC)効果を検討した。本研究では、PCに対して低次補正項のみを持つfw変換法と、相対論効果を無限次まで考慮した無限次DK(iodk)変換法を用いた。PCを考慮しない状態の一重項励起TDMの値から、それぞれの変換によって得られた値との差から、PC効果は本計算における最も重い原子であるHgで約0.12%得られたことが示された。また、fw変換とiodk変換の間には差がほとんど見られず、TDMにおけるPC効果はfw変換で十分表現できることが示された。このようなPCを考慮したTDMをRydberg励起など強い吸収強度を持つ分子系に対して検討を進めていく。 また、昨年度に続いて、YbLiなどの励起状態を含めたポテンシャル曲線の計算を実施し、ultra-cold分子に関する実験的研究者との議論を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相対論を考慮した分子の励起電子状態の計算コードは完成し、原子ではあるがその応用計算も実施して、論文発表した。また、2原子分子のポテンシャル曲線の計算を実施し、該当する実験研究者との議論も進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度にあたって、精密な相対論的電子状態の計算コードを使って。核磁気遮蔽定数や核スピン-スピン結合定数などのNMRパラメーターや超微細結合など分子の磁気的物性の研究を進めたい。また、励起状態の関与する化学反応の解析が可能となるように準備を進める。これらを実現するには、計算コードの更なる加速が必要であると考えている。
|