研究概要 |
提案した新しいタンパク質高次構造解析法によってセグメントの配向を決定出来ることを,モデルタンパク質を用いて実際に証明した.具体的には,αヘリックスを形成する21残基の合成ポリペプチドをモデルタンパク質として用いた.モデルタンパク質をニッケル修飾ガラス表面上に吸着させて作製した配向膜の品質は,まず円二色性分光で調べた.CDスペクトルの形状から,モデルタンパク質はきちんとαヘリックスを形成していることを確認した.次に,ヘテロダイン検出振動和周波発生分光法(HD-VSFG)によって,アミドI領域の振動共鳴二次非線形感受率を測定し,ガラス表面上のモデルタンパク質の“上下”の向きを調べた.その結果,C末端にHisタグを導入したモデルタンパク質は上向き,N末端のものは下向きと,思った通りの配向を実現できていることを確認した.モデルタンパク質の一つの残基をシステインに変異させて,マレイミド基を有する色素分子を導入した.その色素分子の電子遷移に共鳴する二次非線形感受率を,ヘテロダイン検出電子和周波発生分光法(HD-ESFG)によって測定した.その結果,電子遷移に共鳴する二次非線形感受率の符号によって,ガラス表面上のモデルタンパク質の上下の向きを決定できることを示した.以上の結果は,より大きなタンパク質においても,ある一つのセグメントの残基を変異させて,そこに色素分子を導入してHD-ESFG測定を行なえば,そのセグメントの上下の向きを決定できることを意味している.
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