本研究では、ホスホールを基軸とする新奇π共役分子を構築し、その構造―物性相関を明らかにした上で、ホスホール及びπ共役部位それぞれの特性が相乗的に発揮されるような機能性材料の設計指針を提案することを目的としている。本年度は、主に四つの課題-(i) クロスカップリング反応を利用した縮環ホスホールの構築とその物性に対する置換基効果の解明、(ii) 新規π共役ホスホール多量体の物性の解明、(iii)ホスホールを含む共役ハイブリッド多量体の合成とその物性の解明、(iv)合成したホスホール誘導体を含む有機薄膜太陽電池の作製とそのデバイス特性の評価-を目標とした。まず、2-ブロモベンゾ[b]ホスホールのクロスカップリング反応を利用して、α位にヘテロアリール基、ビニル基、エチニル基を導入する一般法を確立した。引き続き、π系末端に導入された置換基が、ホスホール誘導体の吸収・発光特性、酸化還元電位に与える影響を明らかにした。次いで、リン上にアルキルスルホンイミド基を持つホスホール単量体のクロスカップリング反応を利用して、新規ポリホスホール、および、ホスホールとチオフェンを含むハイブリッド型π共役ポリマーの合成に成功した。得られたポリマーはいずれも狭いHOMO-LUMOギャップを持ち、長波長側の可視光を効率よく吸収することを確認している。さらに、合成したハイブリッド型π共役ポリマーを電子ドナーとして含む有機薄膜太陽電池を作製し、そのデバイス特性を評価した結果、ハイブリッド型π共役ポリマーが光活性層として作用することが明らかとなった。以上の結果は、ホスホールを含むπ共役低分子および高分子の構造―物性相関を理解する上で重要な知見を与えるものであり、機能性有機材料のビルディングブロックとしてホスホールが魅力的であることを示している。
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