研究概要 |
本研究は、芳香環骨格に対して複数の高周期14族元素を導入した分子の構築とその物性解明を行い、導入元素の共同効果を明らかにするとともに、高周期元素不飽和結合の化学を物性・機能化学的要素を主眼として新たに展開することとを目的としている。しかし、本研究課題における対象化合物の骨格構築の方法論は十分に確立されておらず、その効率的合成法の開拓が当初の重要な課題である。 平成24年度は、15族元素であるリンとケイ素を同一環に含む1,4-ホスファシラベンゼン類、すなわち複素芳香族化合物の高周期類縁体の合成に取り組み、現在までにその前駆体である1,4-ホスファシラシクロヘキサ-2,5-ジエン類の合成およびその構造解析に成功した。まず、金属交換が容易なスズ原子を環内に含む1,4-スタンナシラシクロヘキサ-2,5-ジエンを高収率で合成し、ジリチオ化を経て種々のリン原子部位を導入した。1,4-スタンナシラシクロヘキサ-2,5-ジエンおよびケイ素、リン原子上に種々の官能基を有する1,4-ホスファシラシクロヘキサ-2,5-ジエン類の合成例はこれまでにほとんど無く、その合成法も含め今後の含ケイ素共役系分子設計の重要な指針を与えたものと考えている。現在までに目的とする1,4-ホスファシラベンゼン類の合成・単離には至っていないが、その発生を示唆する結果を得ており、今後更なる発生方法および導入する置換基の検証を行い、達成したいと考えている。
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