研究課題/領域番号 |
22350021
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
西長 亨 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 准教授 (30281108)
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キーワード | π共役オリゴマー / チオフェン / ピロール / ラジカルカチオン / ジカチオン / ビラジカル / 自己会合 |
研究概要 |
本研究では、これまでの我々の研究で解明してきたπ共役オリゴマーのラジカルカチオンおよびジカチオンの電子構造およびその自己会合挙動に関する詳細な知見を基に、従来の機能性オリゴマーの設計指針には全くなかった"開殻種の自己会合の精密制御"を機能発現に積極的に活用し開発することを目的とし、今年度は以下に示す結果を得た。 (1)被覆基を一部導入したオリゴチオフェンのチオール体を合成し、そのラジカルカチオンがジクロロメタン溶液中、低温で、被覆基の効果により接触部位が限定されたπダイマーを形成することを確認した。また金基板上にSAMを形成させたところ、嵩高い置換基を導入しているにも関わらず、緊密な膜を形成していることがわかった。さらに部分被覆オリゴチオフェンの配位により安定化させた金微粒子の作成に成功し、中性状態では、置換基のないターチオフェンに比べ伝導度が大きく減少していることを見出し、被覆基の効果により明確な"オフ状態"が実現されていることを確認した。 (2)プロピレンジオキシチオフェンを用い、その両端をアルキルチオ基で保護した一連のオリゴマーを系統的に合成し、段階的に酸化種を発生させ、吸収スペクトルおよびESRからその電子状態について詳細に研究した。その結果これら一連のオリゴマー分子はPEDOTのモデルとなることを明らかにし、透明性とドープ率に関する知見を得、論文としてまとめ米国化学会誌に発表した。 (3)ジチエニルピロールに種々の置換基を導入して、ラジカルカチオン種の安定性および自己会合における置換基の効果を検証し、C字型に折りたたまれるオリゴマー分子の設計にあたり、適切な置換基の情報を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、部分被覆オリゴチオフェンを金微粒子でテトラチオフェンを用いた場合に伝導度のスイッチング機能を有する微粒子になることを明らかにすることができ、一定の進展が見られた。また、プロピレンジオキシチオフェンの電子状態で、想定外の成果を上げることができ、論文にまとめた。一方、C字型に折りたたまれるオリゴマー分子の合成は、カチオン種の安定化が必要であることがわかっり、ユニットの置換基効果を検証する必要性が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度が研究期間の最終年度にあたり、ここまで出してきた成果をまとめて、論文にすることが重要になる。やや進行が遅れているC字型オリゴマーの合成を最終年で大きく推進させたい。
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