本研究は、複数の金属錯体とπ共役分子の多次元的な連結により、前例のない『拡張π共役-金属錯体』を構築すると共に、その高次集積化を達成することで、電子伝達能を基盤とする独創的な機能性分子素子の開発を目指すものである。具体的には、拡張π共役金属錯体の多次元化・集積化によって機能性分子素子を創出する。この目的に対して平成25年度は、二つの観点から研究を進めた。 昨年度に続いて電極間に分子をはさんで直接電導度を測定するブレイクジャンクション法による評価の本格測定を行った。昨年度はチオフェン環を末端に有するものを用いたが、電極との相互作用が弱かったので、末端基をピリジンに変えた物を合成して、測定に付した。その結果再現性の乏しかったチオフェン体とは対照的に再現性のよいデータが得られた。また、その値を、金属部分を含まない対照化合物の性能と比較した結果、ワイヤー長は金属錯体の方が長いにもかかわらずより優れた性能を示したことから、金属を導入することによってワイヤー性能が向上することを分子レベルで確認することに成功した。 この他ポルフィリンを架橋部位に含む錯体の合成と電気化学的評価も行い、類縁体と比較して金属間距離が長いにもかかわらず良好な性能を示すことを明らかにした。
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