研究課題/領域番号 |
22350030
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
藤井 浩 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 准教授 (80228957)
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キーワード | オキソ錯体 / 配位子効果 / 反応性 / 不斉選択性 / マンガン錯体 / エポキシ化反応 |
研究概要 |
水酸化反応でも鉄3価ヘム錯体の安定性が反応性を制御しているかを調べるため、種々の軸配位子をもつcompound-Iモデル錯体を用いてアルカンの水酸化反応を行った。C-H結合エネルギーが低くcompound-Iと反応し易いザンセン(xanthene)やフルオレン(fluorene)を基質として用いて、低温で水酸化反応の反応過程を追跡した。これらの基質が水酸化されることをガスクロマトグラフ分析より確かめた。水酸化反応過程を、低温で吸収スペクトルを使って追跡し、反応速度を決定した。得られた反応速度と先の実験で求めた安定化エネルギーとの相関を調べた結果、水酸化反応においても軸配位子の効果が観測できた。しかしエポキシ化のような高い相関関係を得ることができなかった。この結果をさらに解析した結果、水酸化反応においては、水素原子のトンネル効果が反応性に大きく影響していることが明らかになった。一方、平成22年度に合成したヨードソベンゼンが配位したマンガン4価サレン錯体については、スチレンとの反応を行った。不斉分離が可能なガスクロマトグラフィー(GC)で分析し、エポキシ生成物の生成収率とその不斉収率(ee)を決定した。その結果、付加体が高い不斉収率を与えることを明らかにした。さらに付加体のCDスペクトルを測定した結果、非常に強いCDバンドを観測することができ、溶液中でも結晶と類似の構造をとることが明らかとなった。ヨードソベンゼンの構造を変化させることにより不斉選択性が変化するかを検討した。その結果、ヨードソベンゼンのベンゼン環の置換基が不斉選択性に影響を与えることを実験的に明らかにした。この結果は、付加体が直接スチレンと反応していることを示す結果であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エポキシ化反応、水酸化反応において明瞭な軸配位子効果が観測できた。 水酸化反応において、水素原子のトンネル効果という興味深い現象を研究する系を見いだすことができた。 ヨードソベンゼン付加体の構造、電子状態、反応をおおむね解明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に研究計画が推進しているので、今後も研究計画に沿って研究を進める。本年度研究した水酸化反応については、水素原子のトンネル効果という興味深い現象も予想外な結果として観測できたので、この点についても研究を進める予定である。
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