研究概要 |
本研究では,溶媒抽出に用いられたり生理活性を示したりする非蛍光性の遷移金属錯体が液液界面に単分子層レベルで存在する場合,それらが示す極めてわずかな光吸収量を光源,モノクロメーター,ロックインアンプ等を用いて,極限的に顕微分光計測し,極微小な吸光度と吸光スペクトルを取得することを目的としている。その計測によって,遷移金属錯体の界面濃度や界面における存在状態を評価し,機能性について考察したい。 当該年度は,ドデカン-トルエン混合溶媒と水溶液の間の液液界面に吸着したテトラフェニルポルフィナトマンガン(III),Mn^<III>tpp^+,に注目し,水溶液の条件を様々に変えて,顕微鏡で液液界面を観察しつつ,in situ顕微分光測定を行った。その結果,酸性,中性,塩基性条件下でそれぞれ形態の異なる3種の集合体が観察された。そこで,それぞれの集合体の吸収スペクトルを測定したところ,それぞれ異なる吸収極大波長を示した。また,偏光を用いて光吸収の異方性を測定したところ,中性下で生成した集合体のみ偏光依存性を示した。今後,これらの違いの原因をさらに詳細に検討する予定である。 なお,上記のMn^<III>tpp^+の会合体の吸光度と吸光スペクトルを測定するときには,画像解析用のソフトウェアを用いて顕微画像を複数枚積算し,画像上のシグナルとブランクの明度の比から吸光度を算出する方法を採用した。これによって,顕微鏡下,吸光度約0.03の極微小シグナルの検出を可能にしている。
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