研究課題/領域番号 |
22350035
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
原田 明 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 教授 (90222231)
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キーワード | 分析科学 / 1分子計測 / 非蛍光性化学種 / 紫外レーザー分光 / 光熱変換 / ミクロ液体クロマトグラフィー / ヘテロダイン計測 / 多環芳香族 |
研究概要 |
本研究では、溶液中非蛍光性化学種の無標識・超高感度・分離検出法の最終形として、"213nm深紫外励起・多色増幅型光熱変換効果の顕微ヘテロダイン干渉検出"と"親水性相互作用ミクロ液体クロマトグラフィー(HPLC)"との組み合わせから構成される新規装置を開発している。4年計画の第2年度である本年度には主に次を検討した:(I)ミクロ液体クロマトグラフィー/深紫外励起・多色増幅型光熱変換計測系の改良、(II)分子計数条件の理論的検討と最適装置の設計指針の提示、(III)溶液中アミノ酸・核酸塩基等の無標識・超高感度分離分析の実現にむけて検討した。 本研究計画の根幹である(I)の項目については6つのポイントがある。本年度特に(3)屈折率変化高精度計測のためのヘテロダイン干渉計、(6)流速・流量を考慮して設計した顕微光学系・試料セル部について検討した。前者では予定を越えた高感度を実現できる可能性が見いだされた。これに伴い、新たに追加の防音・防振対策が必要となり、アコースティックエンクロージャーを導入した。このシステムに合わせて試料セル部分の再検討が必要となり、継続検討中にある。 (II)の項目について、本年度、非蛍光性アミノ酸について蛍光量子収率を見積もった。合わせて、紫外域で10_<-4>以下の量子収率しか持たない化学種の蛍光スペクトル測定手順を確立した。紫外蛍光が性能の良い超純水の純度モニターとなり得ることも見いだしている。 (III)の項目については、生体関連アミノ酸全20種類の無標識・同時分離条件を見いだした。また、多環芳香族ニトロ化物および塩素化物の分離検出条件を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種化学種の分離検出条件は着実に決定できており、分光特性データの収集も着実に進んでいる。初期の計画を越えた検出感度が実現できる可能性を新に見いだしており、無標識超高感度分離検出最終形を完成させるという目的に向けては、計画以上に進展していると考える。ただし、試作装置が未完成である点では研究が遅れている。以上総合して、概ね順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、装置開発に関しては防振・防音対策の試行錯誤に8ヶ月間以上を費やしている。予想以上にシビアな対策が求められることとなり、一見、装置開発が遅れている。しかし、綿密な検討の結果、新たに導入した防音・防振システムを用いることで、当初予定していた多色増幅効果の利用をするまでもなく目標感度に到達する可能性があり、よりシンプルで汎用性の高い計測システムの実現が期待できる。次年度、装置開発を継続することで、遅れを取り戻すのみならず、当初計画より一歩先に進めると期待される。
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