研究課題
平成23年度は多剤耐性タンパク質の定量法の開発に関する研究成果を論文として公表した。また、細胞内のDNAを分析するために、前処理法としてポリアクリルアミドゲル電気泳動法を利用し、DNAを精製した後に、キャピラリー電気泳動法により分析する方法について検討した。この際、ポリアクリルアミドから抽出したDNAは、ゲルの構成成分であるポリアクリルアミドのファイバーにより汚染を受け、ゲルからの抽出後には、キャピラリー電気泳動においてピークの広がりを示すことを発見した。このことから、ポリアクリルアミドゲル電気泳動でDNAを精製した場合、アニーリーングやポリメラーゼ連鎖反応などの処理により、DNAに絡み合った、ポリアクリルアミドを除去する必要があることがわかった。また、新たに植物細胞内の生理活性物質であるポリアミンをキャピラリー電気泳動法により測定する方法について検討した。ポリアミンは生体内において重要な役割を担っている物質である。この物質をサリチルアルデヒド-5-スルホン酸で標識し、キャピラリー電気泳動により分離定量する方法を開発した。この方法によれば、生体内において重要なプトレシン、カダベリン、スペルミジン、スペルミン、サーモスペルミンの分離が可能であった。しかしながら、紫外吸光光度検出法により、植物細胞内のこれらの物質を測定するには、検出感度が不十分であった。そこで、オンライン濃縮法や固相抽出法との組み合わせによる検出感度の向上を試みた。その結果、固相抽出法を組み合わせることで、検出感度は10倍向上し、植物細胞内のスペルミジンの定量に成功した。この結果は来年度、研究論文としてまとめ、国際的な論文誌に公表する予定である。
2: おおむね順調に進展している
細胞内で重要な働きを果たすタンパク質や小分子の分離定量法の開発には成功している。今後さらに検出感度の向上を目指すことで、実用的な単一細胞計測に展開できる。
今後は、これまでの方法の検出感度を向上させるために、オンライン濃縮法を組み合わせた細胞内成分の計測法について検討する。特に、等速電気泳動法は、マトリックスの影響を受けにくい濃縮法であるため、有効であると予想している。過渡的な等速電気泳動法による濃縮とキャピラリー電気泳動分離を組み合わせることで、生体細胞内の微量成分の計測を目指す。
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