ポストカラム誘導体化反応器を備えた二色レーザー励起蛍光検出器を開発し、糖タンパク質分析への応用に成功した。検出器は450 nmと532 nmで発振する二つのレーザーを用いるものである。二つのレーザーの光路にビームストッパーを置き、交互に開閉することで、450 nmと532 nmのレーザーを交互にキャピラリーに照射した。この方式により、各波長で励起したときの二つの電気泳動図を同時に記録することに成功した。この検出器を利用して、糖タンパク質計測法について検討した。開発した検出器では、すべてのタンパク質は、ナフタレン-2.3-ジカルボアルデヒドによるポストカラム誘導体化により450 nm励起で検出できる。一方、糖鎖は、532 nmで励起できる蛍光色素で標識したコンカナバリンAと反応させて検出した。すなわち、タンパク質は糖鎖の有無に関わらず450 nm励起で検出され、糖鎖をもつタンパク質はコンカナバリンAと結合するため、532 nm励起でも検出される。したがって、コンカナバリンAと反応するタンパク質のみが、450 nm励起と532 nm励起の両方の電気泳動図で同じ泳動時間に検出される。この検出原理に基づき、同時に得られる二つの電気泳動図を比較することで、糖タンパク質と糖鎖修飾を受けていないタンパク質が識別できることを実証した。 また、生体内分子であるグアノシン-5’-一リン酸(GMP)により形成される会合体(G-gel)と種々の芳香族化合物の相互作用をキャピラリー電気泳動により評価することに成功した。G-gelの濃度を変化させ、芳香族化合物の電気泳動速度を計測することで、G-gelの分子認識能を評価した。その結果、G-gelと芳香族化合物との相互作用は、G-gelの疎水環境へのインターカレーション、G-gelと芳香族化合物間の水素結合や疎水結合が重要な相互作用であることがわかった。
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