研究概要 |
金の単結晶電極を用いてサイクリックボルタモグラムと電気化学水晶発振マイクロバランス法を検討し、金表面への銀のUnder Potential Depositionに関わる論文を参考にして評価を行った。電極表面の界面活性剤吸着膜の影響に十分注意を払った解析が必要とされたが、アニオンの種類(臭化物イオン,塩化物イオン)によって銀の析出挙動が大幅に異なることが明らかになった。これらの効果を銀シェルの生成プロセスと相関させて議論した。金表面への銀の電気化学析出は既に詳細に検討された系ではあるが、濃厚な界面活性剤共存下、銀シェルの生成プロセスと関連づけて議論されたことはなく、特異な金属析出の系として新規な知見が得られた。特に、界面活性剤の有無に依存せず、ハロゲン化物イオンの種類だけで銀の析出挙動が変化する事は金ナノロッドや銀シェルの生成メカニズムを考察する上で重要な成果である。さらに、金属表面の吸着物質の解析を表面支援レーザーイオン化脱離飛行時間型質量分析:SALDI-TOFMASS法によって行った。金ナノロッド固定ITO基板を作製し、オリゴペプチド(アンジオテンシン)を滴下し、SALDI-TOF-MASS法による検出に成功した。マイクロモルからフェムトモルのアンジオテンシンを滴下した場合でも金ナノロッドの分光特性変化を観察できた。さらにSALDI-TOF-MASS法ではフェムトモルの濃度でも10以上のS/N比でアンジオテンシンの分子イオンを検出することができた。面積密度しては10-19mol/cm2という非常に低い濃度でのオリゴペプチドをSALDI-TOF-MASS法で検出したという報告はこれまでに無く、世界最高の検出感度を実現することができた。
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