研究課題
銀シェル金ナノロッドを基板に固定し、過酸化水素を添加すると銀シェルの溶解が起こることを確認した。この溶解反応を抑制する目的で、各種酵素を検討し、銀シェルの溶解挙動を検討した。カタラーゼを用いた場合は、高効率なカタラーゼの酵素反応によって銀シェルの溶解を完全に抑制することができた。一方、西洋わさびペルオキシダーゼ(horse radish peroxidase ; HRPを用いた場合は、基質の最適化が必要であった。いくつかの基質を検討した結果、もっともシンプルなフェノールを用いた場合に十分な反応速度が得られ、HRPの酵素反応による銀シェル溶解の抑制が観察された。この場合の酵素の固定量は10^<-15>mol以下であり、実用的な免疫検出に必要な感度に達していることを確認できた。一方、金ナノロッド固定基板の分光特性が基板やタンパク質の吸着によってどのように変化するかを定量的に議論した。基板表面の高分子層の構造変化が敏感に反映されるなど、金ナノロッドの近傍の環境と分光特性の相関を定量的に取り扱うことに成功した。基板表面の高分子層の分子構造や層構造を適切に設計することで、金ナノロッドの分光特性が鋭敏に応答するシステムを作れる可能性を明らかにした。さらに、金ナノロッドをITO基板に固定し、この金ナノロッドの表面状態を最適化することで表面支援脱離イオン化質量分析(SALDI-MS)の測定に成功した。一連の試行錯誤の結果、10^<-18>molオーダーのオリゴペプチド(アンジオテンシンI)の検出に成功した。この検出感度は金ナノ粒子を用いたSALDI-MSとしては最高レベルのものであった。今後の最適化により一段の感度向上が期待される。
2: おおむね順調に進展している
銀シェルの酸化溶解挙動の制御に多くの時間を費やしたが、酸化を抑制するという方向で制御可能であることを明らかにできた。金ナノロッド/銀シェル金ナノロッド固定基板の分光特性制御/質量分析については順調に実験成果を挙げており、複数の論文を報告することができた。
より実用的なイムノアッセイをめざして、実際に抗原抗体を用いた系を最適化する。分光分析や質量分析を併用することで総合的な分析法の確立をめざす。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (10件) 産業財産権 (1件)
Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry
巻: Vol. 221, Nos. 2-3 ページ: 204-208
DOI:10.1016/j.jphotochem.2011.02.015
Nanoscale
巻: 3 ページ: 3793-3798
DOI:10.1039/C1NR10519A