研究課題/領域番号 |
22350039
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
早下 隆士 上智大学, 理工学部, 教授 (70183564)
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研究分担者 |
遠藤 明 上智大学, 理工学部, 准教授 (00119124)
橋本 剛 上智大学, 理工学部, 助教 (20333049)
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キーワード | 疎水ナノ空間 / 糖分離機能 / アゾ色素プローブ / シクロデキストリンゲル / ボロン酸 / 分子鋳型 / 超分子 / 吸着等温線 |
研究概要 |
フェニルボロン酸は糖のシスジオールと特異的に結合し、エステルを形成することが知られている。このことを利用し、我々はフェニルボロン酸をもつプローブをシクロデキストリン(CyD)に包接させた超分子複合体糖認識化学センサーを多く開発・評価してきた。しかし、その現象を利用した糖の分離については殆ど研究されていない。そこで本研究では、昨年度に引き続きγCyDGel中にボロン酸型アゾプローブであるB-Azo-C_nを包接させ、B-Azo-C_nと糖類との結合体としてゲルの中に吸着させることで溶液中から糖類を選択的に分離する超分子ゲルの開発を行った。特にテンプレート効果を用いてゲルを合成し、糖分離における選択性を向上させることを目的とした。また、アゾプローブのアルキル鎖長の効果についても調べた。グルコースをテンプレートとして用いたB-Azo-C8ゲルとテンプレートなしのB-Azo-C8ゲルに対し吸着等温線による評価を行った。その結果、テンプレートなしのゲルに比べガラクトースの吸着量は減少し、フルクトースの吸着量は殆ど変わらなかったが、グルコースに対して吸着量は増加した。これはゲル化する際のグルコースとの前配向により、ボロン酸と2:1型でグルコースに結合しやすい配置になり、一方、結合位置が違うガラクトースの吸着量は減少し、1:1型で結合するフルクトースはボロン酸との静電気的な反発、立体障害のため結合しにくくなったと考えられる。アルキル鎖が短いC6ではCyDから抜けたプローブのアゾ基の吸収により吸着量が負の値になった。アルキル鎖を伸ばしたC10,C12でのアルキル鎖を用いた測定では、鎖長が長いものほどグルコースの吸着量が増加していた。これはアルキル鎖長が増加するに従ってCyDとの疎水性相互作用が強まり配置を固定しやすくなったと考えられる。C8のテンプレートなしのゲルはガラクトース選択性を示すのに対し、C10,C12のテンプレートなしのゲルではガラクトースに結合しなかった。この特異的な現象について、現在ガラクトーステンプレートゲルを用いて検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ボロン酸型アゾプローブを埋設したシクロデキストリンゲルは、予想を上回る高い糖選択性を示すことが確認できた。ボロン酸型に続くジピコリルアミン型プローブの合成に着手しているが、ゲルの作成が本年度計画にずれ込んでいる。本手法を用いて、様々な生体関連物質の分離を実現したい。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画はおおむね順調であるが、本年度からは、超分子型機能膜の作成に着手したい。シクロデキストリンゲルだけでなく、デンドリマーやナノシリカ界面を利用した分子鋳型も可能であることがわかっており、これらも酢酸セルロース膜に埋設した超分子型機能膜への展開にもチャレンジ予定である。
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