研究概要 |
スピロビスイソオキサゾリジ(SPRIX)とパラジウム塩から調製した錯体を不斉触媒としてβ, γ-不飽和カルボン酸の5-endo-trig型の環化反応、2-アルケニル-1,3-ジケトン類のワッカー型環化反応、1,6-エニン類の塩素化を伴う環化反応等が進行することを見出した。いずれの反応もSPRIX以外のキラル配位子を用いた場合には、エナンチオ選択性が低いか反応が全く進行しない。1,6-エニン類の塩素化を伴う環化反応は、Pd(IV)が反応に寄与するエナンチオ選択的触媒反応として我々が2009年に報告した例に続いて2例目である。 さらに、キラルなスピロ化合物の新規調製法としてダブルHuisgen反応を活用するキラルスピロトリアゾール化合物の合成にも成功した。得られたスピロトリアゾール体は、光学異性体分離カラムによって光学分割が可能で、アルキル化とアニオン交換反応によりキラルなイオン液体へ、またアルキル化で得られたスピロビストリアゾリウム体を塩基で処理することによりスピロビスN-ヘテロ環状カルベン(SNHC)へと変換可能であった。現在、キラルなイオン液体を触媒とするエナンチオ選択的反応や、SNHCをキラル配位子とする触媒反応の探索を行っている。
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