私たちは、様々な芳香族トリフルオロメチル化剤の探索を行なった結果、フルオラール由来のシリル化トリフルオロメチルヘミアミナールが、芳香族トリフルオロメチル化剤として有効に働くことを見出した。錯体触媒系としては、銅-フェナントロリン(phen)錯体が本反応に対し有効な触媒活性を示すことを見い出した。多くの試行実験を行なった結果、溶媒としてジグリム、塩基としてフッ化セシウムを用いる系が、最良の結果を与えた。様々な芳香族ヨウ化物のトリフルオロメチル化クロスカップリング反応が、0.1等量の銅錯体を用いることにより、穏やかな条件下にて進行し、対応するトリフロオロメチル化生成物が良好な収率で得られた。本系では、トリフルオロメチルヘミアミナール誘導体からホルムアミドの脱離を伴いながらトリフルオロメチル化クロスカップリングが進行した。触媒サイクル機構で反応が進行するため、少量の銅錯体の使用により反応が完結したと考えられる。本トリフルオロメチル化クロスカップリング反応は、1)入手・合成容易な化合物をトリフルオロメチル化剤として用いる点、2)触媒サイクル機構で反応が進行するため、触媒量の銅錯体を用いて反応が完結する利点を有する。さらに私たちは、芳香族トリフルオロメチル化以外に、芳香族ジフルオロメチル化反応についても検討した。その結果、銅触媒を用いることによって、芳香環に、ジフルオロ酢酸部位およびジフルオロボスホン酸エステル部位を導入することに成功した。
|