研究課題/領域番号 |
22350043
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
網井 秀樹 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00284084)
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研究分担者 |
林 昌彦 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60192704)
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キーワード | 有機合成化学 / フッ素 / 有機金属化学 / 選択的変換 / クロスカップリング / トリフルオロメチル化 / ジフルオロメチル化 / 不斉合成 |
研究概要 |
トリフルオロメチル基,ジフルオロメチル基などの含フッ素置換基を有機化合物に導入する反応は,多岐に渡るフッ素化合物を合成する強力な手法である。私たちはこれまでに、フルオラール由来のシリル化トリフルオロメチルヘミアミナールが、銅触媒芳香族トリフルオロメチル反応に有効に働くことを見出し、成果を論文発表した。平成23年度は、芳香族化合物へのジフルオロメチル基導入法の開発を目指し,研究を実施した。クロスカップリング法による直接的芳香族ジフルオロメチル化反応は極めて例が少ない。これは反応中間体であるジフルオロメチル金属種が不安定であることに起因する。そこで,脱炭酸ルートを検討した。ジフルオロ酢酸エチルエステル部位導入源として,α-シリルジフルオロ酢酸エチルエステルを用いた。ジメチルスルホキシド溶媒中,1当量のヨウ化銅,及びフッ化カリウム存在下,ヨウ化アリールに対しα-シリルジフルオロ酢酸エチルエステルを反応させると,良好な収率で目的の芳香族ジフルオロ酢酸エステルが得られた。エチルエステルの加水分解後,フッ化カリウム触媒存在下,加熱することによりカルボン酸の脱炭酸反応が進行し,良好な収率で芳香族ジフルオロメチル化合物が得られた。一方、不斉トリフルオロメチル化について検討を行った。具体的には、トリフルオロメチル銅錯体によるアリル位置換反応を実施した。本不斉トリフルオロメチル化反応は、研究期間を半年間延長し、慎重に行ってきた。本反応系では、SN2’反応様式(γ位置換)による不斉点の構築を目論んだが、実際はα位がトリフルオロメチル化された生成物が選択的に得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
触媒的フルオロアルキル化反応で、新しい知見が着実に得られた。トリフルオロメチル化,ジフルオロメチル化クロスカップリング反応の両方について成果の論文発表に至ったため、本研究目的に沿って研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
有機分子のトリフルオロメチル化,ジフルオロメチル化において,二つの反応を開発した。特に後半の不斉トリフルオロメチル化は,生理活性が期待される光学活性有機フッ素化合物を効率的に得る強力な手法である。現在のところ,本反応において,アリル型基質へトリフルオロメチル化の位置選択性が問題となる。トリフルオロメチル化された生成物はα位置換体であり、単純なアリルハライドを用いると不斉点が生じない結果となった。現在、α位に置換基を有する基質を用いて、不斉点の構築を検討している。
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